もし本当に、自分の頭で考える部下を育てたいなら、この逆をすればよい。

 部下の分まで考えないこと。そして、「驚く」こと。

 部下の提案が自分の腹案より見劣りしていても、それを口に出さない。アイデアの良否より何より、自発的に考え始めたこと自体を喜び、「おお! いいね! 他にも何かあるかな?」と思考を促す。問いを発し続けることで、思考を深める補助はしても、何をどう考えるかは部下任せ。

 一言一言に対し「ほう!」「それでそれで?」と、驚きと関心を示す。すると、それが部下にとって、自分の頭で考えるエネルギー源となり、頭がフル回転し始める。やがてあなたは、本当に驚かされることになるだろう。「ええ! まさかこんなアイデアが!」。

「違い」を受け入れ楽しむ

 上司のあなた自身が「自分の頭で考える」ことと、部下に「自分の頭で考え」てもらうことは、求められるテクニックがまったく異なる。

 ライオンに火の輪をくぐらせ、ゾウに曲芸を教える人は、自分で見本を示す必要はない。大切なのは、ライオンやゾウに、挑戦してみたい、という能動性を呼び覚ますことだ。

 ライオンやゾウに芸を仕込むからって、ライオン以上の鋭いツメとキバを持つ必要はない。ゾウ以上に巨体になる必要もない。人間はライオンやゾウより非力でも、芸を仕込むことは可能だ。それは、ライオンやゾウから、そう動かずにはいられない、という、能動性を引き出すからだ。

「自分の頭で考える」上司は、しばしば「自分のように考える」ことを部下に期待する。しかし、部下は別の人格であり、あなたとは別の人生経験を歩んできた。同じものを見ても感じ方、考え方が異なって当然だ。