ついに開幕したプロ野球。4連覇を狙う広島カープ、大型補強のジャイアンツが優勝候補筆頭に挙げられるセ・リーグのなかで、虎視眈々と力をつけているチームがヤクルト・スワローズだ。その魅力は他球団も警戒する「打撃力」。一昨年から脅威のレベルアップを果たした秘密を、石井琢朗1軍打撃コーチに聞く。(JBpress)
最下位からジャンプアップした攻撃力
車を降りる姿を目にして、一瞬戸惑う。手にしたゴルフクラブ。「今日、オフだった・・・か?」。思わずチームスケジュールを確認する。
19時前、練習を終えた選手が続々と食事に出かけていく中、ヤクルトスワローズ1軍打撃コーチの石井琢朗はそんな姿でホテルへと戻ってきた。
「球団ワースト記録の96敗で最下位」という屈辱を喫したヤクルトが一転、昨年は2位にまで躍進した理由には打撃力アップがある。チーム打率はセ・リーグ1位(一昨年は最下位)。打撃10傑にはなんと4人の選手(青木宣親、雄平、坂口智隆、山田哲人)が名を連ねた。得点数は、一昨年の473から658(リーグ2位。1位は広島カープ)と200点近く増えている。
その破壊力は今年も健在で、オープン戦のチーム打率は12球団中3位、得点数は2位である。
打撃力向上の理由はいくつか挙げられる。二度目の指揮官復帰となった小川淳司監督のもと、生え抜きの宮本慎也がヘッドコーチに就任し、メジャーからは青木宣親が戻ってきた。
そして1軍打撃コーチに就任した石井琢朗の存在だ。
打撃コーチのキャリアは3年、今年4年目を迎える。そのスタートとなった広島カープでは2年連続でチーム打率リーグ1位に導き、リーグ連覇に貢献した。
つまり、石井が1軍打撃コーチを務めたチームは3年連続で「チーム打率リーグ1位」を記録しているのだ。
当の石井は、チームの躍進と打撃力アップについてこう言う。
「全体で言えばまだまだ発展途上。だから去年に関しては青木の存在だよ。ベテランって本来だったら一歩引いたところでチームや選手を見て、背中を押してあげる存在なんだけど、青木の場合は自分が先頭に立って、声を出して、ベンチの中でも鼓舞してるっていう感じだったから。やっぱり、青木だよね」
「発展途上」。もちろん、その通りなのだろう。しかし、カープでもヤクルトでもこれだけ飛躍的に数字を向上させたことは結果が示している。