オープン戦も中盤戦。「開幕前夜」はドラフト1位ルーキーの動向だけを見ても、まだまだ活況だ。結果を出し続ける広島・小園海斗、DeNAの上茶谷大河や千葉ロッテ・藤原恭大、実戦に復帰したドラゴンズ・根尾昂らが連日メディアを賑わせている。
そんな中で、北海道日本ハムファイターズのドラ1位ルーキー・吉田輝星が3月12日、教育リーグで初となる対外試合に登板する。投手という事情はあれど、他のルーキーたちに比べて遅いデビュー。
そこには「育てる」ファイターズの哲学があるのでは――。
栗山英樹監督は新刊『稚心を去る』でルーキーに対する考え方を綴っている。昨シーズン大きな注目を浴びた「ルーキー」清宮幸太郎へのアプローチだ。
マイナスからのスタートだった清宮幸太郎
当時の高校通算ホームラン最多記録を持っていた中田翔の入団からちょうど 10 年、その記録を大きく上回る111発という記録をひっさげ、清宮幸太郎はファイターズにやってきた。
ドラフト会議で7球団が競合した逸材だけに、周囲の期待は大きかったが、1月の新人合同自主トレで右手親指を打撲し、キャンプではなかなか打撃練習ができなかった。
オープン戦では、 19打席ノーヒットと不振が続き、さらに、3月中旬には「限局性腹膜炎」で緊急入院。その影響で、体重は8キロ減ったという。というわけで、彼のプロ生活は、まずは野球ができる体に戻していくことから始まった。
開幕は二軍で迎え、公式戦初ヒットが生まれたのは4月17日、イースタン・リーグの東北楽天ゴールデンイーグルス戦。普通にやれば打つのはわかっていたので、ヒットを打ったと聞いても、「ああ、ようやく元気になってきたんだなぁ」という感じだった。
一軍デビューは5月2日のこれもイーグルス戦で、「6番・DH」で出場すると、2回の第1打席、いきなりセンターオーバーのツーベースを放ち、札幌ドームのファンを喜ばせた。
相手は、球界を代表するピッチャーの一人である岸孝之。
そう思うと、ファイターズは不思議と岸とは縁がある。優勝した2012年、中田翔の覚醒を確信したホームランは、当時ライオンズの岸から放ったものだった。さらに、翌2013年の開幕戦、「8番・ライト」で先発出場したルーキーの大谷翔平が、5回の第2打席、プロ初ヒットとなるライト線へのツーベースを放った相手も岸。そして、今度は清宮。
中田、大谷、清宮、そういう星の下に生まれた選手は、本当に力のある選手と巡り会うようにできているのかもしれない。