ファイターズの開幕投手が発表された。アメリカ・アリゾナで行われていた1次キャンプの最終日、栗山監督から出た名前は、昨シーズンにエース級の活躍を見せ、侍ジャパンにも選ばれた上沢直之だった。
その上沢について、栗山監督は新刊『稚心を去る 一流とそれ以外の差はどこにあるのか』で、ある試合の登板に言及し、彼への期待を綴っている。
本稿では特別にその内容を紹介する。
つねに、その日一番勝ちやすいことを考える
10月13日、クライマックスシリーズ・ファーストステージ第1戦。ファイターズのスターティングメンバーを見て、少し驚かれた方もいたかもしれない。サプライズがあったからではない。むしろ、その逆だ。いたってオーソドックスな、シーズン終盤を戦ってきたそのままのメンバーだったからだ。
超短期決戦は、普通に戦うべきではない。自分たちの力を発揮しやすい形よりも、どれだけ相手の嫌がることができるか。そんなふうに公言していながら、どうして一見「普通」のスタメンになったのか。
シーズン中、こうやって戦ってきたんだから、それで負けたらしょうがない、という発想はこれっぽっちもなかった。もしそうだとしたら、それは言い訳に感じてしまう。
つねに、その日一番勝ちやすいことを考えるのが最も大事なこと。つまり、この日こうなったのは、勝つ確率が一番高いのはこれだという結論になったから。それが、たまたまシーズン中のオーダーと一致していただけの話だ。
具体的には、こんなことを考えていた。
ホークスの先発・ミランダは、左腕でありながら、左バッターよりも右バッターをよく抑えている珍しい傾向のあるピッチャーだ。その相性を踏まえると、1番に西川、2番に近藤と左バッターを並べる考え方もあった。