8年目のシーズンを迎える栗山英樹監督(写真・高須力)。

 指揮官・栗山英樹は、現役監督最長となる8年目を迎える。7年で2度のパ・リーグ制覇、1度の日本一、5度のクライマックス・シリーズ進出という実績に加え、エンゼルス・大谷翔平や清宮幸太郎ら若い選手の育成など前例のない「監督道」を示し続けてきた。

 そんな指揮官がまとめた新刊『稚心を去る 一流とそれ以外の差はどこにあるのか』では「四番・中田翔」について、1章を使って綴っている。清宮幸太郎や吉田輝星といった新しいスターたちが注目されるなかで、指揮官が中田翔へかけた思いとは――。本稿では、『稚心を去る』よりその一部をご紹介する。

エースと四番だけは出会いなんだ

 自分の現役最後の年、新監督としてヤクルトスワローズにやってきたのが野村克也さんだった。それまで9年連続Bクラスだったチームを、野村監督はまもなく生まれ変わらせ、就任3年目の1992年、チームを14年ぶりの優勝に導いた。
 
 その野村監督が、こんなことをおっしゃっていた。

「エースと四番だけは出会いなんだ」

 良いピッチャー、良いバッターは育てることができる。でも、自他ともに認める「投の柱」、「打の柱」として、長くチームを支え得るエースと四番だけは、意図して育てることはできない。それだけ難しいということだ。

「エース」と「四番」の定義は明確ではない。毎年、どのチームにもエースと呼ばれるピッチャーはいるし、打順でいうところの4番目を打つバッターもいる。
 
 だが、ここでいうエースと四番は、それとはややニュアンスが異なる。誰もが「この選手で負けるならしょうがない」と認める先発ピッチャーが真の「エース」であり、「この選手が打てなかったらしょうがない」と託せる中心バッターが真の「四番」、そんなイメージだろうか。