2年連続MVP選手のFA宣言。ここ数年でも最も注目が集まった動向に決着が着いた。広島から巨人へ――。丸佳浩外野手は来シーズンから東京にその軸足を移す。
入団時より広島を取材し続けたスポーツジャーナリストの前原淳氏はこの移籍をどう見たのか。(JBpress)
移籍に飛び交う丸佳浩への厳しい声
これほど大きな移籍はいつぶりだろうか。
広島からFA宣言した丸佳浩外野手が、11月30日に巨人移籍を表明した。広島のFA移籍は2015年オフの木村昇吾、主力選手で言えば13年オフの大竹寛以来だが、衝撃度は米大リーグ・ドジャースへ移籍した黒田博樹とともに、新井貴浩が阪神へ移籍した07年以来か――。
移籍発表から、広島ファンの丸への厳しい声がネットで飛び交っている。移籍する選手の宿命なのか?
丸はあくまで選手の権利を行使し、3球団と交渉した結果、巨人を選んだ。
行く先を選ぶ際の「選択肢」は選手によって異なる。
当然、プロである以上、金額で評価されるのは当たり前のことであり、非難されることでもない。
ただ、今回の丸が金額面だけで移籍先を決めたとは思えない。というのも、条件だけをみれば3球団の優劣は容易につく。それなのに丸は交渉解禁から半月も悩み、最後の最後まで広島残留の可能性を残していた。条件面ではあれだけ開きがあるのにだ。
02年に同じように広島からFA宣言をし、阪神へ移籍した金本知憲氏と、今回の丸の巨人移籍を勝手に重ねている。
当時も金本氏が広島に求めた要求は決して受け入れられないほど難しいものではなかったと聞く。丸と同じように残留への思いも強かった、と。当時を知る人も「移籍はないと思っていた」と振り返る。
それでも広島とのわずかなボタンの掛け違いから、当時阪神監督の星野仙一氏の口説き文句に落ち、阪神へ移籍した。