悲願の日本一奪還が叶わなかった広島カープ。それでもセ・リーグでその強さは群を抜く。3連覇を成し遂げたこの3年の貯金数は順に37、37、23と、実に97を数える。
その強さを語るときの「猛練習」という言葉はもはや代名詞となった。しかし、その猛練習を継続し続ける、いわば「伝統を作る力」は簡単に得られるものではない。欠かせなかったのはベテランが見せる姿勢。新井貴浩、小窪哲也そして忘れてはいけないブラッド・エルドレッド。退団が発表された「助っ人外国人」はその数字以上の働きを見せていたのだ。(前原淳、スポーツライター)
広島の「猛練習」はなぜ伝統になったのか
3連覇を成し遂げながら、日本一を逃した広島は、11日から秋季キャンプを行っている。今年は例年以上に主力選手の参加が免除され、若手中心のメンバー構成となった。猛練習を課せられるだろうが、誰よりも本人たちがやらなければいけないことを知っている。なぜか。
今季限りで現役を引退した新井貴浩を筆頭に、広島ベテラン陣の背中を見てきたからだ。
今シーズン、新井は左ふくらはぎを痛めて開幕2軍スタートとなった。その後、患部の回復とともに練習を再開。5月1日には実戦復帰した。
若いときから猛練習で鍛えられたベテランは、四十路を越えても自らを追い込む。それはオフに公開されてきた護摩行やの自主トレの様子を見ても明らかで、別メニューが与えられた春季キャンプでも、自主的に坂道ダッシュを繰り返したり、特守を受け続けたりと練習量をこなしてきた。
「もちろん若い選手から見られているというのはある。だけど、やらないといけないのは当たり前のこと」
さらりと言ってのける41歳。若手の中に混じっても決して手を抜かず、名球会入りする大先輩の姿に、若手はそれ以上やらなければいけないという思いを強くした。
練習態度から、試合での集中力と懸命な姿勢。当たり前のことをやる。当たり前のようで難しいことを実績あるベテランが態度で示してくれていた。
中堅からベテランとなった小窪哲也も、新井の影響力を認める。