メジャーで起きたことが1年後に日本にやってくる、とはよく日本球界でいわれることだが、昨今のメジャーにおける「データ」ブームもまた徐々に日本へと浸透している。しかし、その活用はメジャーには及ばず、観る側も「データ」を過信する、ないしは無関心なものが大半だ。
実際のグラウンドで、チームで、データがどのように使われるべきか、日本ではまずその体系化が必要な段階だともいえる。
野球における「データ」の現在位置とは? 日米の野球を経験し現在はサンディエゴ・パドレスで顧問を務め、スカウティング会議などにも参加する斎藤隆さんに話を聞いた。(スポーツライター、田中 周治)
3種類に分けられるデータの活用法
「野球は数字のスポーツ」という言葉があるように、野球という競技におけるデータの重要性は古くから認知されてきた。特に近年は、ボールや選手の動きを測定する機材の発達により、「データ野球」はすさまじいスピードで進歩を遂げている。野球界は現在、データ大隆盛の時代を迎えていると言っていいだろう。
ただ、データとひとことで括っても、その種類はさまざまだ。活用の仕方で大別すると、次の3要素に分類できるだろう。
➀試合に勝つためのデータ(相手の配球、打球方向の傾向など)。
②選手育成のためのデータ(投球の回転数や回転軸、打球速度など)。
③スカウティングのためのデータ(補強・契約時に有用な能力指標など)。
どれか一つの分野に特化したものもあれば、すべての面で有用なデータもある。データ隆盛時代は、データ乱立時代と言い換えてもいい。
一般的な野球ファンの中には、「データが大切」ということは理解できても、具体的にどう重要なのかピンと来ていない方も多いのではないだろうか。
日米における圧倒的な「データ」の差
横浜ベイスターズで先発、そして抑え投手として活躍した斎藤隆さんは、2006年にロサンゼルス・ドジャースへ移籍。移籍当初、まず驚いたのが日米野球界におけるデータ量の違いだった。
「日本時代はどちらかと言えば自分からアクセスしてデータを取り入れていました。まず有用なデータを探し集めることがデータとの接し方だったんです。ところがメジャーでは、自分に必要のないデータを切り捨てるところから始めなければならなかった。それくらいチームが選手に提供するデータの量が多かったんです。日本時代と比べれば大きな差がありましたね。それはベイスターズが遅れているとか、ドジャースが進んでいるということではなく、当時の日米の差だったんだと思います」
自分の経験が日米すべてに当てはまる比較ではない、と前置きをしつつ斎藤さんはそう振り返った。
多すぎるデータの中から自分で選択したデータを、試合で使えるように頭の中にインプットしたメジャー時代。こんな笑い話があったという。