データで明らかになってきたホームラン、キレ・・・

 弾道測定器の機能(トラックマン)と、高性能カメラでの測定機能(トラキャブ)を統合したものを「スタットキャスト」といい、メジャーリーグでは30球団すべてがこのシステムを導入している。

スタットキャストによるデータ。試合中ボールと選手の動きをつねに測定している(MLB.com)

 トラックマンとは、軍事レーダーの技術を用いて、ボールの動きを追跡する装置。投手の指から離れたボールがどういう軌道で動いたか、三次元的に捉えることができ、1球ごとに投球の速度、回転数、回転軸の方向、リリースポイント(グラウンドからの高さ&ホームベースまでの距離)、打球速度、打球の角度、飛距離なども測定できる。

 また、高性能カメラの映像データは、主に選手の動きを捉えるために使用され、走者の走る速度、走塁のルート、野手の打球への反応速度、捕球時までの守備ルートなどを数値化でき、このシステムをトラキャブと呼ぶ。

 こうしたビッグデータの解析がチームを強くしていったことは確かだ。

 たとえば高性能カメラにより、各打者の打球方向のデータが集まる。そうすると打者ごとにアウトの可能性が高い場所に守備選手を配置する極端な守備シフトを採用することが可能になる。この戦術によるピッツバーグ・パイレーツの躍進は、「ビッグデータベースボール」として知られる。パイレーツは2012年まで20年連続負け越していた“不名誉な”チームだったが、この戦術で13、14、15年と3年連続でポストシーズンに進出する快挙を達成したのだ。

 一方、打者側はその守備シフトを破るために、シフトの影響を受けないホームランを打つための打法に取り組んだ。フライボール革命と呼ばれるものだ。何キロ以上の打球速度で、どういう打球角度になればホームランが出やすいのか、という点までは科学的に解明されている(バレル理論)。

 そして現在、その最先端にいるチームの一つが、昨年のワールドチャンピオンで、今シーズンも103勝を挙げポストシーズンに進出するなどここ数年好成績を挙げ続けるヒューストン・アストロズだ。3年連続(2011~13)でリーグ100敗以上を喫するこちらも“不名誉”な記録を作っていたチームは、「ビッグデータ」を活用した戦術を取ることで、大化けした。

 こうしたデータは選手やチームに何をもたらしたのか。