1年目は「必要なものを与えていく」

 デビュー戦で、運良く初ヒットが出た清宮だったが、その後、トントン拍子にはいかなかった。

新刊『稚心を去る』は先月発売され好評を博す。

 21試合に出場して、打率1割7分9厘、ホームラン1本、打点2。5月末の交流戦開幕 を前に、もう一度、二軍に行ってもらった。一カ月弱、一緒に野球をやってみて、一軍で活躍するためにはやっておかなければならないことがたくさんある、ということが改めてよくわかった。それがはっきりしたので、それを経験させるためにファームに行かせた。そこで前に進めば、また一軍で、別な経験をしてもらう。
 
 1年目の道筋としては、彼に必要なものをちゃんと与えていく、ということがベースになっていた。これは清宮に限らず、すべてのルーキーに言えることだ。

 野球界では「即戦力」という言葉がよく使われるが、監督になって、ドラフト1位で獲った選手が、1年目からチームの勝ち、優勝に貢献してくれるイメージを持ったことはない。
 
 2014年秋のドラフトで4球団が競合した早稲田大の有原航平は、即戦力の呼び声高いピッチャーだったが、ファイターズが抽選で交渉権を獲得し、入団が決まったあとも、やはり1年目は「必要なものを与えていく」ということを第一に考えていた。
 
 高卒ルーキーであれば、なおさらそう。清宮のずば抜けた能力に疑いの余地はないが、これから長くプロの世界でやっていくためには、必ず通らなければならない「道筋」がある。そういう意味では、最初のうちに、中途半端に結果が出なくて良かったとも思う。それでは、彼のためにならなかったと思うので。
 
 ダメなものがはっきりと出てくれたおかげで、本来通るべき道筋を、ああして歩むことができたのだと思う。(『稚心を去る』栗山英樹・著より再構成)