球団史上最年少監督として大きな話題を呼び、その手腕に期待が寄せられている平石洋介氏(写真:根原奉也)

 さまざまな業界で、若いリーダーが増えている。彼・彼女らは、これまでの常識にとらわれない発想ややり方で社会に大きなインパクトを与え、業界を変革する。若さはリーダーにおける武器となりつつある時代だ。

 旧態依然、と言われ続けるプロ野球界にも少しずつではあるがそうした時代の色が見え始めている。

 昨年までジャイアンツの監督として指揮を執っていた高橋由伸は41歳で、DeNAの現監督ラミレスは42歳でその任についたし、3シーズン前の2016年について言えば、セ・リーグ全6球団の監督が40代だった。

 そして、今シーズンから東北楽天ゴールデンイーグルスの監督に就任した平石洋介は38歳。

 球団史上最年少の指揮官は野球界にどんなインパクトを与えてくれるのか。これまでの監督とは違った「マネジメント色」を野球界に見せてくれるのでは・・・そんな思いを持って平石の話を聞きに行った。

コミュニケーションは歳で取るものなのか?

「若いからコミュニケーションを取るっておかしいと思うんですよ」

 平石は、言い切った。

 取材も終盤に差し掛かり、「12球団の監督の中で、ここだけは負けないというものは?」という質問に、腕を組みなおして思案したあとのことだ。

“選手との距離が近い球団最年少の監督で、東北楽天ゴールデンイーグルス創設以来そのユニフォームを着続けた男、だからこそ選手とのコミュニケーションも密に取れる――。”

 平石洋介について「語られる言葉」は、おおよそこんなところだろう。

 グラウンドには、確かにその通りの姿がある。ときに笑顔を交えながら選手と会話をする平石に、いわゆる「監督然」とした雰囲気はない。現役選手であってもおかしくない年齢だから、むしろ誰よりもグラウンドに馴染んでいる、キャンプを見てそう感じた。

銀次選手と話し込む平石監督。

 しかし、平石からすればそれは「若さ」と関係がない。

「(若いことを自分の長所と言われると)年輩になるとコミュニケーションは取らないものなのかな? って思うんですよ。若いからコミュニケーションを取る、距離が近いって、当たり前のように言われますけど、それって決めつけじゃないですか。年齢が上がってもコミュニケーションを取る人は取るでしょうし、若くても取らない人は取らない。僕の場合は、選手と本気で向き合うために必要なものがコミュニケーションで、それが自然なんですよね」

「僕の考え方が正しいとは全く思わないですよ」と前置きをし、「数年後、僕がまったくコミュニケーションを取らなくなってるかもしれない」と笑いを取った平石の、指導哲学はこの「本気で向き合うこと」に集約される。

「僕が今、選手たちといい関係性を築けているかはわからないです。でも極力ね、ふだんからいろいろな話をするようにしています。野球の話だけじゃなく、あほなことを言ってもいい。なんかそういうとこはこう・・・素の状態というか、本心で付き合いたいというか、本気で向き合いたいんですよね」