バッティングピッチャーもこなす石井は、プロ入り当時・投手で入団。勝利も挙げている。

十数種類の「練習法」

 その答えの鍵となるのが、冒頭のゴルフクラブだ。当たり前だが、ゴルフをしていたわけではなく練習に使っている。キャンプ中、開幕スタメンを手繰り寄せることになる期待のスラッガー・村上宗隆にゴルフクラブで公式球サイズのプラスチックボールを打たせ続けた。

「面を見せず(体を開かない)に、しっかりと右腕に張りを作ってスイングさせるため」

 この練習の意図をそう話した石井だが、実はカープでもヤクルトでも、一見、野球と関係がないようにみえる練習方法を発案し、選手に提案している。

 その一つが、メトロノームを使った素振り。メトロノームの鳴らす音に従って、選手たちが力強く素振りをする。

「スイングの再現性を高めてほしいから。ヤクルトに来て、シーズンをとおして(相手ピッチャーに対して)同じバットスイングができない選手が多いな、と思った。みんな力はあるのにそれが発揮できていない。だから(メトロノームの)一定のリズムで、同じタイミングで同じスイングを何回も何回もすることで、再現性を身につけてほしいな、と」

 ピッチャーのリズムに合わせて打たなければならないバッターは常に受け身である。自分の間(ま)で振れる打撃練習などとは状況がまったく違う。

「相手はそれに合わせてくれないからね。(メトロノームのリズムに合わせる)そういう状況の中で、同じスイングができるようになれば、と思っています」

 他にも、ソフトボールを用いたティーバッティング、折れたバットを使ったバット投げ、テニスで使用されるインパクトで音が鳴る器具を自腹で購入し使わせたこともあった。その練習に取り組むのは、レギュラーも若手も関係なく、キャンプ中、主砲・ウラディミール・バレンティンが、ティーバッティングで顔を歪めていると思ったら、バッティング終了後に鉛の入ったベストをドスンと落としていたシーンには驚いた。

おもりが入ったベストを着用してティーバッティングをするバレンティン。手前は石井コーチ。

 取り入れた練習方法はなんと数十種類に及ぶ。