写真:AP/アフロ

 劇的な開幕戦勝利であった。ホームにオリックス・バファローズを迎えた北海道日本ハムファイターズは、8回に2点差を追いつくと、延長で迎えた10回裏。2人のバッターを眼前で歩かされ(申告敬遠)1アウト満塁で迎えた好機に「四番・中田翔」は「サヨナラ満塁ホームラン」というこれ以上ない結果で、チームの期待に応えた。

 栗山英樹監督就任以来、8年目の「四番」。昨シーズンからキャプテンの大役も担う中田翔へ、指揮官が抱くのは「いまのレベルではない」という思いだ。自著ではその思いを実に1章にわたって綴っている。

(※)本稿は『稚心を去る 一流とそれ以外の差はどこにあるのか』(栗山英樹・著)の一部を抜粋・再編集したものです。

求めるのはどこまでいっても中田翔の「結果」

 小3のとき、野球を始めたという中田だが、キャプテンを任されたのはこれがはじめてだったという。どのカテゴリーでもキャプテンに指名される選手もいれば、またその逆もいる。そういった意味では、彼はいわゆる「キャプテンタイプ」の選手ではなかったということになる。
 
 でも、そんな彼なりに、キャプテン就任1年目となる2018年シーズンはよく頑張ってくれたと思う。キャプテンに求められる役割を、本当に一所懸命やり切ってくれた。

 象徴的だったのは、5月15日、東京ドームでのライオンズ戦だ。0対0で迎えた7回の 守備で、一塁側のベンチ前に上がった小飛球に向かって猛然とダッシュ、ダイビングして地面すれすれで好捕した。チームは直後の攻撃で2点を奪い、そのまま2対0で勝利した。
 
 けれども我々は、彼にキャプテンとして、チームのために犠牲になってほしいと願っていたわけではない。誰よりも本人がそれを一番よくわかっていると思うが、我々が求めているものは、どこまでいっても中田翔自身の結果であるということだ。
 
 あえて厳しいことを言うが、そういう意味では、我々は彼にこんな数字を求めているわけではない。

 中田翔という選手は、こんなレベルではない。
 
 誰からも一流と認められる数字を残せるはずの選手なのだ。
 
 彼には、どうかそのことをわかってほしい。
 
 頑張ったからいいんじゃない、ということを。言うまでもなく、ここで頑張るのはごく当たり前のこと。プロは結果を残すために頑張っているのであって、頑張ったから、といって評価される世界ではない。