ドラえもんに出てくるいじめっ子のジャイアン、アンパンマンの悪役バイキンマンなど、確かにストーリーの中では敵役ではあるが、どこか憎めないキャラである。のみならず、バイキンマンは悪役にもかかわらず結構ファンも多い。
1月の出張で成都の後に訪問した北京や上海で、多くの中国の友人たちにこの日本のアニメの特徴について話したところ、全員がことごとく賛同した。
日本通の中国人の親友は、もし中国人がアンパンマンのストーリーを描いたら、バイキンマンは第1話で退治されて、第2話以降、決して出てくることはないと語った。
その場にいた中国人はもちろん、その後で私がこの話を伝えた中国人も、全員が全くその通りだと言って大笑いした。
中国・上海で開催されたアニメ・コミック・ゲームをテーマとする「ホタルACGフェスティバル」に参加したコスプレイヤー(2018年10月2日撮影)。(c)CNS/殷立勤〔AFPBB News〕
3. 日本に行くと人格が変わる中国人
前述のアニメ専門家によれば、こうした日本独特のアニメは日本人にしか作ることができないそうである。
日本人が作るので、日本のアニメの中には日本の伝統精神文化が自然に内包されている。思いやり、おもてなし、恥の文化などが代表例だ。
多くの中国人が幼い頃から日本のアニメを夢中になって見ているうちに、その日本の伝統精神文化が無意識のうちに心の中で共有され、深く浸透していく。
一つひとつ心を込めた丁寧なおもてなし、相手の心情を察した細やかな思いやり、不都合な結果に関して他者を責めず自らの努力不足を問う自責の念、外面的な一律の基準で定められたルールに反すること以上に自分の内面の良心に反することを恥じる恥の文化・・・。
もちろん日本人でもこれらの精神文化を徹底して生きている人間はほとんどいない。
ただ、そういう姿を見れば素晴らしいと思うし、完璧ではないが、自らもある程度は実践している人が多い。
一方、現在の中国における日常生活では、それらを中国人が実践する機会は少ない。
そんな日本の伝統精神文化への共感を心の中に抱く中国人が、10代、20代で旅行や出張で1~2週間日本へ行くと、その精神文化の中で生きている日本人の世界に初めて出会う。