もちろんこれには、味方、相手の動きを察知し、全体のバランスを見極め、自分のポジショニングやプレーを選択する能力が求められる。運動量は軽減しても、とにかく90分間ずっと考え続けなければいけないので、身体的な疲労よりも、頭が疲れる。でも、だからこそ、面白さがある。

 ヴォルフ監督のもとで、新しい役割を果たしながら、僕自身の意識にも大きな変化が生まれた。チームの勝利のためには、「得点という結果に直結する仕事」にこだわる部分があったのだけど、それに加えて「目に見えない結果につながる仕事」も重要だと考えるようになったことだ。

 たとえば、ボールに関与しなくても、僕のポジショニングによって、チャンスが生まれることもある。黒子としての仕事の面白さと重要性を自覚し、そこに誇りを持てるようになった。

 若いチームのなかでは、数多くの経験を重ね、ベテランと呼ばれる選手になった僕は、新監督によって、新しいモチベーションを得られた。ヴォルフ監督は、彼自身の哲学をピッチで表現するために、厚い信頼を僕に寄せてくれる。その期待に応えたいという使命感とともに、自分の可能性の広がりも感じている。