2位と1年での昇格に向け前進しているハンブルガーSVでクラブの中心選手として躍動する酒井高徳。

 20歳で渡独、8シーズン目を迎える酒井高徳は他の日本人選手にはない「経験」を積んでいる。日本代表として、2010年南アフリカワールドカップ(※サポートメンバー)からブラジル、ロシアと3大会を経験。2016年にはブンデスリーガで日本人選手で初めてのキャプテンを務め、厳しい降格争いを戦い、ロシアワールドカップ後には日本代表から退く決意をする――。

 稀有な「経験」を積んできた酒井高徳は、どんなことを考えながらプレーをしているのか。そのプロフェッショナリズムとはどんなものなのか。連載でお送りする。

若い監督が増えてきた理由と驚かされる熱量

「ラップトップ・トレーナー」という言葉がよく聞かれるようになった。

 ラップトップとは、日本でいうところのノートパソコンのこと。ようはパソコン監督という意味だ。ここ数年、ブンデスリーガでは30代前半の若さで指揮を執る監督たちが注目を集めているが、テクノロジーを駆使し、自らの戦術をチームに落とし込み、結果を残す彼らは、そんなふうに評されている。

 サッカー監督として仕事をするには、そのチームのカテゴリー(選手の年齢やリーグ)によって、それぞれのライセンスが必要で、たとえば、代表でどんなに活躍した選手であっても、講習を受講し、テストに合格しなければ、ライセンスは得られない。

 ドイツでは、指導実績を経て初めて受講資格が得られるため、ブンデスリーガ、いわゆるトップカテゴリーの指導者ライセンスを取得するには、ある程度の時間が必要になる。

 だから、30代前半でその資格を手にするというのは、若いころから指導者の道を志さなければならず、その多くは、現役選手としての実績がほとんどない。ケガで現役を退いたり、アスリートとしての能力は足りないけれど戦術眼やリーダーシップを評価されたり、そのきっかけはさまざまだけど、なかには、まったく異業種の仕事を経て、監督になった人もいる。

 ドイツでは、2000年の欧州選手権で代表チームがグループリーグ敗退を喫したことをきっかけに、選手育成制度の見直しが始まったと言われている。フィジカル能力だけで戦っていては勝てない、とブンデスリーガ各クラブのユースチームを整備し、高い技術力と戦術理解能力を持った選手を育てる環境を生み出した。

 その結果が2014年のワールドカップ優勝へと繋がっている。