開幕を1週間後に控えたJリーグ。今シーズンの「チームビジョン」はどんなものか。元日本代表の岩政大樹氏がキャンプをとおして各チームを分析する。今回は、鹿島アントラーズと水戸ホーリーホック。
監督を変えなかった両チームにあった二つの選択肢
鹿島対水戸のプレシーズンマッチを観ました。両チームとも監督が変わらない中で、注目したのは「どのくらいチームに変化を加えてくるか」。
特に、鹿島アントラーズは昌子源選手や西大伍選手といった主力が抜け、「個」の戦力ダウンは否めない状態で、チームとしてどのような上積みをもって今シーズンに挑もうとしているのか、要注目でした。
「リニューアル」か「マイナーチェンジ」か。
昌子選手と西選手に加えて小笠原満男選手も含めると、3人もの発言力ある選手が抜けたことは、大岩監督からすると「リニューアル」も可能だったと思います。元々、一昨シーズン(2017シーズン)の途中から指揮を執ることになったため、自身の色を出すタイミングは限られていたので、ここで一気に戦い方を変える「リニューアル」もあるかと思っていましたが、「マイナーチェンジ」に収めたというのが、水戸戦を観た感想です。
ということは、これが大岩監督のやり方ということでしょう。今シーズンはその真価が問われます。
「マイナーチェンジ」とは「整理」と言い換えられます。特に守備面において、プレスに行くラインの設定を整理してきた印象です。
昨年は「なんとなく」で食いついていった選手により間延びしてしまい、それがうまくハマらない試合では脆さを露呈していたので、「中盤でコンパクトに」というのは強調されていたように感じます。守備陣形を整えたところからは、経験のある遠藤康選手あたりがスイッチを入れ、高い位置までプレスをかけていく形に移行していくこともありましたが、まずは「中盤でコンパクトに」というのがチームの約束事として統一されていたように見えました。
あとはバランスでしょう。「中盤でコンパクトに」を意識するあまり、前線からハメていけるチャンスを逃しているようにも見えました。こうなると、どうしても「90分間の中の多くを凌駕していく」ような戦いにはなり得ず、もったいないと感じる場面も散見されました。
だからといって「前から行こう」と言うだけでは間延びしてしまい、特に守備陣の主力が抜けた今季はそれが致命傷になりかねません。昨シーズンに比べてデリケートな判断が求められるはずで、このあたりのバランスの見極め方がシーズンの中で定まるかどうかは今シーズンの課題の一つだと思います。