いよいよクラブワールドカップ(CWC)が開幕。日本からはアジアチャンピオンズリーグ(ACL)初制覇を果たした鹿島アントラーズが出場する。
鹿島OBである岩政大樹氏は自身が始めた『PITCH LEVELラボ』で、アジアの頂点を勝ち取った古巣を「史上初を意識してきたクラブの悲願」と称えた。
「史上初を意識してきたクラブ」とはどういうことか。岩政氏の言葉で振り返る。(JBpress)
「史上初」を意識し続けた鹿島
「ACL優勝は、浦和レッズ、ガンバ大阪に次いで3クラブ目。鹿島は、常に『史上初』を意識してきたクラブ。レッズ、ガンバに遅れをとっていたことをずっと悔しく思っていたので、クラブ全体の長年の悲願でした」
岩政氏は、自身が執筆するメルマガ『PITCH LEVELラボ』の中で、ACL制覇という偉業について、クラブの伝統的な価値観に触れながら喜んだ。
「史上初」を意識してきたクラブとは、鹿島アントラーズが残してきた歴史に紐づけられる。
Jリーグ創設以来25年、鹿島アントラーズがタイトルを獲得できなかった年は10度しかない(ゼロックスを含めると8度になる)。2年に1度以上のペースで必ず何かしらのタイトルを獲ってきた。
そしてリーグ優勝は、2位の横浜F・マリノス、サンフレッチェ広島、ジュビロ磐田の3回を圧倒する8回。Jリーグ史上、未だ破られていない3連覇もあった。
そんな圧倒的な存在だからこそ、OBである岩政氏は他クラブが先に成し得、未達だったアジアの頂点に「悲願成就」の思いを抱いたわけだ。
頂点を獲れた鹿島に備わっているもの
では、なぜこれまでたどり着けなかった頂点にたどり着けたのか。岩政氏は同メルマガ内でいくつかのポイントを挙げた。そのひとつが「流れ」だ。
「これまでは勝てず、今年勝てた理由はただ単に『流れをつかめた』部分が大きかったと思います。トーナメントを勝つというのは、それなりの力があることは大前提ですが、そこから先は巡り合わせみたいなところがあります。そのチャンスをよく掴んだと言えるでしょう」
一見して運に任せているようにも取れるが「大前提」と指摘した「それなりの力」を備えていることは、簡単ではない。岩政氏はこう説明する。
「優勝するためには相応の力が必要です。これが大前提。僕が入団してからの3年間、鹿島はひとつもタイトルを取ることができませんでした。その後、6年間にわたってタイトルを取り続けることができましたが、何が違ったかと言われると、まずそもそも優勝するにふさわしい力がなかったというふうに思っていました。戦術や(鹿島アントラーズについてよく指摘される)『勝負強さ』を語る前に、それだけの力をつけていなければ、優勝に辿りつくことはできません」
では、ほかのクラブになくて鹿島にはあるものとは何なのか。
「鹿島にあるもの、と言われたら空気感です。クラブハウスに行き、グランドに立った時に感じる独特の空気感。それは、勝つことに対して妥協を許さないクラブとして受け継がれてきた、日々のディテールへのこだわりから作られている。一つの負けも、それを招く可能性があるどんな小さなことも許さないという空気があります。これはみんなが口を揃えて言いますね」
唯一無二の空気感を、長い年月をかけて作り上げてきた鹿島アントラーズ。
2年前の2016年、日本のクラブ初のCWC決勝に出場したのもアントラーズだった。柴崎岳らが躍動。今大会も出場する世界的ビッグクラブ・レアルマドリードから2点を奪い、延長戦に持ち込む接戦を演じた。
「史上初」を意識してきたクラブ、鹿島。2016年のその先を虎視眈々とうかがっている。
アントラーズの初戦は15日日本時間22時より、北中米カリブ海王者のチーバス・グアダラハラ戦となる。(『PITCH LEVELラボ』より引用・再構成)