今回、被告の長期勾留が国際的に批判されたが、東京地裁の国際的発信力の欠如も問題であった。たとえば、12月20日に東京地裁が検察の勾留延長要求を却下した翌日、検察は被告を特別背任罪で再逮捕したが、その際に世界に向かって、できれば英語で事情を説明すべきであった。この再逮捕もまた、日本の司法に対する国際的批判を招くことになった。
とくに、クリスマスの直前であり、「サンタクロースのプレゼント」を期待していた人々の失望を買ってしまった。これが、キリスト教国で日本の司法に対する批判をさらに激化させることにつながったのである。
「黄色いベスト」かと思ったゴーン氏の変装姿
ルノー・日産・三菱自の提携関係については、今後、3社及び日仏両政府間で調整がなされるであろうが、フランス政府はゴーン被告を「切り捨てて」おり、保釈が今後の方針に影響することはないであろう。新会長には、既にジャン=ドミニク・スナール氏が就任しており、日産との関係修復にも着手している。ティエリー・ボロレCEOも、日産との関係について「危機のピークは過ぎた」と述べている。
ゴーン被告が東京拘置所から出るとき、作業員に変装し、作業用の軽ワゴンに乗り込んだが、すぐに本人だとばれてしまった。背広姿で堂々と日産の高級車に乗ったほうがよかったのであろうが、私は、自分を見放したフランス政府に抗議するために反政府デモ隊の「黄色いベスト」を着用したのかと思ったくらいである。
裁判には時間がかかるので、仮にゴーン被告が無罪を勝ち取っても、それが3社関係を根底から揺るがすことにはならないと思われる。しかし、ゴーン被告の供述次第では、今回の逮捕が日産側のクーデターであるという説が再燃し、それがフランスの世論に影響する可能性も否定できない。
しかし、時間の経過とともに、3社の経営から退いたゴーン被告の存在自体が忘れられていく。過酷なものである。そして、日本の自動車メーカーにとっては、今やイギリスのEU離脱(Brexit)の行方のほうが気がかりの状況となっている。