(舛添要一:国際政治学者)
2月27日、28日の両日、ハノイで第2回目の米朝首脳会談が行われたが、その成果は、事前の予想通り、高く評価できるようなものではなかった。結局、非核化の進め方などで合意に至らず、今後も協議を行うことで幕を閉じたからである。
ハノイ会談は「シンガポール会談の二番煎じ」
トランプ大統領によれば、「金正恩委員長から制裁の全面解除を要求されたが、それをアメリカ側が拒否したので、合意に達しなかった」という。ただ北朝鮮との良好な関係は維持するという。
これに対して、北朝鮮の李容浩外相は深夜に記者会見し、「われわれは全面解除ではなく、一部解除しか要求していない」と反論した。具体的には寧辺核施設廃棄の見返りは生活関連の制裁(「民間経済と人民の生活に支障を与える項目」という表現)の解除のみと主張した。そして、寧辺については、「これは朝米両国間の現在の信頼水準からみて、われわれが考える最も大きな幅の非核化措置」だと述べた。
どちらの主張が正しいか分からないが、両国間で十分な信頼関係が確立していないこと、完全な非核化へ至る段階や手法についてすら合意できていないことが明白になったと言えよう。そして、事務的な事前折衝も不十分だったようである。
さらに、超強硬派のボルトン補佐官の参入が、下手な妥協をしなかったことにつながっている。彼は、アメリカが英仏独中ロとともに結んだイランとの核合意に反対の立場で、安全保障問題担当の大統領補佐官に着任早々、アメリカをこの合意から離脱させている。北朝鮮に対してのみ態度を変えることはありえないからだ。
後述するが、米朝首脳会談と時を同じくして、米下院公聴会でトランプ大統領の元顧問弁護士であるコーエン氏が証言したことも、微妙な影響を与えている。