ぜいたくな「家庭の味」だった昭和のドーナツ

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(9)ドーナツ

2019.03.08(Fri)三保谷 智子

小麦粉の表記は「メリケン粉」、40個分のレシピ――昭和13年

1938(昭和13)年4月号の「栄養と料理カード」。1匁(もんめ)は3.75g、竓(みりりっとる)はml、瓦(ぐらむ)はgのこと。
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「栄養と料理カード」裏面の記載が残っていないため、作り方は前年本誌掲載のドーナツ記事から推察する。メリケン粉(小麦粉)はふるって砂糖とベーキングパウダーと混ぜ合わせ、卵と牛乳を溶き合わせて加え、よく混ぜ合わせる。めん棒で伸ばしてドーナツ型で抜く。揚げ油に落とし、揚げる。油をきって粉砂糖をふる。

 このころのレシピの単位は尺貫法とメートル法が混在しており、カードには出来上がりの個数も明記されていないので分かりにくいが、1個分の分量から割り出すと約40個分に相当する。鍋に油をなみなみと注いで次々にドーナツを揚げるさまは圧巻だろう。油も砂糖もたっぷり使うおやつはぜいたくなことだった。

 すでに家庭で揚げ物が敬遠されて久しい現在では、ドーナツを40個も揚げるのは、油の使用量や後始末を考えるだけでも難儀なことだ。

「料理の型紙」で取り組むと――昭和26年

1951(昭和26)年4月号は「料理の型紙」としてドーナツを取り上げている。調理の手順を1本の線の工程で示している。
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『栄養と料理』は、もともと医師夫妻の香川昇三と綾が創設した栄養学を学ぶ学校の講義録であった。そのため、料理の捉え方も科学的で、数値や工程には再現性があり、誰でも作れるように表現しなければならないという思想がある。レシピも生化学実験のような手順を基本にしている。

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