ぜいたくな「家庭の味」だった昭和のドーナツ

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(9)ドーナツ

2019.03.08(Fri)三保谷 智子

 その様子が分かるのが、昭和20年代の連載「料理の型紙」である。1951(昭和26)年には「ドーナツ」が取り上げられている。

 概量、重量、価格ともに尺貫法、メートル法、ヤード・ポンド法などの単位が混ざっている。読みにくいが、家庭生活ではまだまだ単位法が混在していた時代と分かる。重量と容量の併記も、それぞれの家庭にある計量器で計れるようにとの配慮と思われる。ここでは、膨張剤として、ベーキングパウダーではなく重曹を用いている。また、牛乳ではなく粉乳。

 調味の割合の項目で、砂糖はメリケン粉100gに対して30%重量で30g、重曹はメリケン粉100gに対して1%(ベーキングパウダーなら4%)と、各自が好みの分量で作るときにも応用が利くように考えられている。各材料の価格のほか、1個当たりの価格も明記されていて興味深い。

「能率」の項目では、調理の手順を時間軸のラインによって表現している。上は調理台での手作業部分、下はコンロの回りの火作業部分となっており、ひと目で各工程とその所要時間が分かる。ただし、「12分」でドーナツ8個が作れるとは、筆者自身の能力からもとても思えない。当時の人々の段取りのよさに脱帽する。

ドーナツ型が家庭にあり、手作りしていた時代――昭和30年

1955(昭和30)年8月号より。「ソフト・ドーナツ」6人分で12個分のレシピ。
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 カードの左には「粉ふるい、ボール、泡だて器、木じゃくし、ドーナツ型、フキン、計量カップ、スプーン」と器具が明記されている。裏面にはドーナツ型の絵があり、表面に「代用は・・・あきカンのフタでよい」と注意書きがある。

 ここでも材料を数値化して表すことに積極的で、ベーキングパウダーは小麦粉の重量の4%、砂糖は小麦粉の26%。ベーキングパウダーの代用は小麦粉1カップに対して重曹1さじ1/3強と酢大さじ1でもよいと説明。これは全体量が変わっても動じることなく対応できるようにという意図がある。

 また要点を見ると・・・。(1)粉は菓子用粉(薄力粉)がよい。ベーキングパウダーは良質を選ぶ。(2)粉以外の材料はよく混ぜるが、粉は練らずにダマは作らない。(3)タネはやわらかめのほうがフンワリできる。(4)揚げ油の温度は低いと油っぽく、表面がかたくなる。(5)夏期はバタ(バター)が溶けるから牛乳はひかえるほうがよい。このように5項目を挙げている。

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