また「保存できる」や「安全な食品」など、ところどころ大事なキーワードを拾って、萬平の言葉をそのまま繰り返しています。これも、話を聞いていないとできないことであり、「私はあなたの話を聞いていますよ」というサインとなります。

 福子は何か新しいアイデアを出したわけでも、意見を述べたわけでもありません。しかし、最後まで話してもらうことで、萬平は考えを十分にアウトプットでき、まとめることができたと考えられます。

比喩が相手のイメージを研ぎ澄ます

 話を聞きながら、感じたことをそのまま相手に返す「フィードバック」も、変化を起こす効果があります。アドバイスではなく「話を聞いて私はこう感じましたよ」と伝えることで、相手の考えがより明確になったり、違う視点に気付いたりする場合があるのです。

NHK連続テレビ小説『まんぷく』番組公式サイトより

 たとえば、インスタントラーメンのイメージを語る萬平に、福子が比喩を使って返す場面。こちらもセリフを引用してみます。

萬「そんな手間ひまを掛けないで簡単にできるラーメンだ、僕が作りたいのは」
福「それは……たとえば、たくあん。これが屋台や中華料理屋さんのラーメンやとします」
萬「たくあん?」
福「たくあんを作るには、初めに大根を軒下に干します。……(たくあんが手間ひま掛けて作られることを説明する福子)」
萬「……で、たくあんが、屋台のラーメン?」
福「だとしたら、萬平さんが作りたいラーメンは、一夜漬けですね。(一夜漬けが非常に簡単に作れることを説明する福子)……せやけど、たくあんと同じくらい一夜漬けもおいしいでしょ?」
萬「そうだ福子、僕の作りたいラーメンは、漬物でいったら一夜漬け、一夜漬けラーメンだ」
福「えへへ……モヤモヤが晴れてきましたか?」
萬「ああ、晴れてきた」
福「そこにあるのは、どんなラーメンですか?」
萬「どんなラーメン?」
福「うん、どんなラーメンが、見えますか? 萬平さん」
萬「いやいや、見えない」
福「見えない?」
萬「ああ、まだ全然見えない。でも、なんて言うかな、目指す島はまだ見えないが、海を覆っている霧は晴れてきた。ありがとう、福子、ありがとう」
(『まんぷく』第94話)