このように、話している本人もまだモヤモヤしていて分からないことはよくあります。「あなたの言いたいことは、こんなこと？」と比喩などを用いてイメージを返してあげることで、より明確になる場合があります。必ずしもそのイメージと合致しなかったとしても「いや、そうではなくて、こんな感じ」というように、より明確に言い表すきっかけとすることができます。

人から見える自分をはっきりと自覚させる

　また「あなたは私の目にこんな風に見えていますよ」と伝えてあげることは、相手にとって大きな財産となります。

『安藤百福 私の履歴書 魔法のラーメン発明物語』（安藤百福著・日経ビジネス人文庫）
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　福子がふと思い返すように「やっぱり、性に合わなかったですか？理事長のお仕事は」と萬平に問いかける場面。信用組合の理事長でありながら、町工場で万能調理器の製作に関わっていたときの萬平がいきいきしていたことを指摘すると、萬平も確かに言われてみればそうだな……と気付くことになります。

　自分のことは自分ではよく分からないものです。萬平もこのように指摘されるまで、そんなにワクワクしていたことに気付いていなかったでしょう。私からはこんな風に見えていますよ、と伝えてあげることで、萬平は物づくりを心底楽しんでいる自分や、発明家としての使命を明確に自覚することができたと言えます。

　今ドラマでは、二人の家庭は貧しい状況です。しかし話を効果的に聞いてあげることは、相手の創造性や行動力を高める、お金の掛からない最高のギフトです。福子らしい関わり方で、今後もインスタントラーメン開発に大きな役割を果たしていくことでしょう。

（執筆協力：シェアーズカフェ・オンライン）