これに対し、カタリストを担う元マネージャーからは「(カタリストという名前に変わることで)マネージャーとしての権限がなくなって、責任だけが残るの(苦労が増えるだけ)ではないか」という懸念の声も上がったという。そこで、権限と責任も整理して明示したのが次の図だ。

カタリストの役割詳細。(MGR=マネージャー)
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 まず、責任については、全社員で分担することが大前提となる。そのうえで、一部を除き、マネージャーの人、情報、金に関する権限をなくしていき、全社員がその権限を担うことになる。

「同僚からの評価」に基づいて報酬を決定する

 マネージャーの「権限」から外れた内容のうち、従業員にとって、最もインパクトがあるのが「評価」の部分だったという。

 新たな評価制度は、複数の同僚からの評価によって、報酬が決まる、いわゆる「360度評価」の方法である。ただし「360度評価」でイメージされがちな「部下が上司も評価する」という縦方向のものではなく、文字通り360度、つまり関係性があるあらゆる方向の従業員が評価する、ということである。

 具体的には、仕事の関わり具合が高い社員、5~10人が評価者となる。そして評価者となった従業員は、新たに定義された11のコンピテンシー(活躍者として期待される水準)によって、対象者を評価する。「評価者」(マネージャーではない)担当と「評価委員会」の調整というプロセスを経て、最終的な評価が決定する。この間、DS(Development Support)と呼ばれる面談を短期的に複数回(1カ月に1回が目安)行うことがポイントとなっている。

 この評価方法について、現場の従業員から「同僚を評価するのは『責任が重い』」との声も上がった一方、「真剣に相手のことを考える機会になった」(評価される側が)「自己認識に近く、納得」という声も上がっているという。