伊映画監督B・ベルトルッチ氏死去、『ラストタンゴ・イン・パリ』など

フランスのカンヌ国際映画祭で名誉賞「パルムドールドヌール」を受賞した、イタリア人映画監督ベルナルド・ベルトルッチ氏(2012年5月23日撮影、資料写真)。(c)Valery HACHE / AFP〔AFPBB News

 イタリア映画界の巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督が亡くなった。7月には、『暗殺のオペラ』(1970)のデジタルリマスター版が公開。近年も新作への意欲が伝えられていただけに大変惜しまれる。

 前回コラムでは、『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)『ラストエンペラー』(1987)など、世界的な有名作を中心に、その作品を経歴とともに概観した。

 今回は、原点とも言える初期の作品、『革命前夜』(1964)『暗殺のオペラ』(1970)『暗殺の森』(1970)3作の異なる「イデオロギー」の主人公たちの姿を、それぞれの物語を並行して追いながら、深層心理を中心にベルトルッチの世界を探ってみたいと思う。

 『革命前夜』は、ベルトルッチ23歳の時の作。

 この監督第2作は、生まれ故郷に近い大都市で、幼少時、映画館に通っていたイタリア北部エミリア・ロマーニャの大都市パルマが舞台。主人公たちの名前は、この地を舞台にしたスタンダールの有名小説「パルムの僧院」からとっている。

 映画は、最初に「革命前夜を生きなかった者は生きることがいかに甘美か理解できない」というタレーランの言葉を示し、続けて、教会へと街を走る主人公ファブリツィオの姿と、街の様々な風景、空撮映像をうつしだし、モノローグから始まる。

1962年4月

パルマ川が街を分ける 貧民地区と富裕地区に
歴史の外にいる者のなかを歩いている

彼らの時代は去った 教会が自由を窒息させたのだ
僕と同じパルマのブルジョワたち 彼らは存在するのか
クレリアは町 僕が拒んだ町なのだ

 当時のベルトルッチ自身と年齢も近く、その投影とも言えるファブリツィオはブルジョワ家庭の子息だが、共産主義に傾倒している。

 同じブルジョワ家庭の昔からの婚約者クレリアとの決別を決意、最後に一目、彼女を見ておこうと考えたのである。

 自身「細胞の一つひとつまでブルジョワ」と語るベルトルッチは、16歳で、年上の友人やピエル・パオロ・パゾリーニを知り、「共産党宣言」を知った。

 監督処女作『殺し』(1962)がそのパゾリーニの原案作だっただけに、この第2作では、「自分を出す」意欲満々。様々な著作、映画、とりわけヌーヴェルヴァーグからの引用が多い。