第71回カンヌ国際映画祭で、是枝裕和監督の『万引き家族』が最高賞パルムドールを獲得した。
老婆の年金を頼りに、万引きを重ね暮らす格差社会底辺の家族を描き、日本人4人目の快挙を成し遂げた是枝監督は、「この映画祭に参加するといつも映画を作り続けていく勇気をもらいます」と語った。
グランプリは白人至上主義団体KKKに潜入する黒人警察官を描くスパイク・リー監督作『BlacKkKlansman』。
テーマは「Invisible People」
レバノンの女性監督ナディーン・ラバキーは中東の現実を映し出す『Capernaum』で審査員賞を受賞し、ポーランドのパヴェウ・パヴリコフスキが監督賞を得た『Cold War』は文字通り冷戦に翻弄される男女の物語。
そんな受賞作に見られるように、審査委員長を務めたケイト・ブランシェットは、今回は「invisible people」が大きなテーマと語っているが、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ問題をきっかけに活発化した「#MeToo」ムーブメントも映画祭に波及。
ブランシェットをはじめとして90歳となるアニエス・ヴァルダ監督など女性82人が集い、映画界における男女格差への抗議声明を発表しており、カンヌらしい、社会性、政治性が色濃く、世界の今と連動する映画祭となった。
今回の映画祭のポスターには、ジャン・リュック・ゴダール監督の『気狂いピエロ』(1965)のワンシーンが採用されていたが、ゴダールの新作もコンペティションにエントリー。
その『Le Livre d’image(英題「The Image Book」)』が映画祭初の「特別パルムドール(Palme d’or speciale)」受賞を果たした。
87歳となったゴダールは会場には姿を見せなかったものの、Facetimeを通じインタビューに応え、新しい問題に常に関心をもち続けるゴダールらしさがうかがえた。
そんなフランス映画の歴史的ムーブメント「ヌーヴェルヴァーグ(Nouvelle Vague:新しい波)」の旗手ゴダールの様々な言動が収められているのが『ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー』(2010)。
もう1人のヌーヴェルヴァーグの巨匠フランソワ・トリュフォーとの関係を軸に、ムーブメントのたどって来た道をたどるドキュメンタリー映画には、50年前のカンヌ国際映画祭での姿がある。
ゴダールは強い語調で語る。「1週間前、学生たちは体を張り闘った。遅ればせながら、フランス全土の学生・労働者に映画人からの連帯の挨拶を送る」
トリュフォーも主張する。「工場は閉鎖、列車がとまり、地下鉄もバスもとまる。そんな状況で映画祭開催など、愚の骨頂」