(舛添要一:国際政治学者)
港区が南青山に児童相談所(児相)を建設する計画を立てたところ、一部の住民が騒ぎだし、これをマスコミが大きく取り上げて、全国的な注目の的になっている。
区が開いた住民説明会で、反対派は、青山ブランドに傷がつく、地価が下がる、子どもが騒ぎをおこしたら近所迷惑になる、事業費が高額すぎる、などの意見を述べたが、それを聴いていると、児相と少年鑑別所を混同するなど、多くの事実誤認をしているのではないか疑わざるをえない。
子どもを虐待から守る体制が強化されている
児童福祉法に定められた児相は、家庭や学校から児童に関する色んな相談を受ける機関であるが、とくに児童虐待問題について大きな公的責任を負っている。ところが、近隣住民から虐待の疑いの通報がありながら、児相の対応が遅れ、子どもの命が奪われる事件が起こるなど大きな社会問題となっている。
親が他の地方自治体に転居した場合に、虐待情報が転居先の町に伝わらず、それが悲劇的な結末に繋がる。香川県から目黒区に転居した5才の女児が虐待され、2018年3月に死亡した事件がその典型である。
この事件を受けて、政府は、この12月18日に関係省庁連絡会議を開き、「児童虐待防止プラン」をまとめ、体制強化を図ることにした。具体的には、2022年度までに、虐待情報収集を任務とする「子ども家庭総合支援拠点」(今は106市町村にしかない)を全国の市町村に設置すること、児相の職員(2017年現在で4730人)を2900人増員することを決定した。
このように、地域社会全体で虐待から子どもの命を守る取組が強化される中で、青山の児相建設問題が話題となったのである。