(舛添要一:国際政治学者)
イギリスでは、12月12日の夜、与党・保守党がメイ党首に対する信任投票を行った。これは、離脱強硬派が仕掛けたものであるが、200対117票でメイ首相は信任された。
もし、不信任になっていれば、党首、そして首相退任となっていた。そのような事態は避けられたが、これで問題が解決したわけではない。117票、つまり、全体の37%もの保守党議員が信任に反対したことは重く、この票数だけでも辞任に値すると論評する者もいるくらいだ。
メイ首相の対抗馬は見当たらず・・・
保守党のルールでは、あと1年間は同様な信任投票はできないが、問題は全く解決しておらず、今後の展望も開かれていない。しかも、不評とは言え、メイ首相の対抗馬は見当たらないのである。支持率世論調査によれば、①メイ首相が30%、②コービン労働党党首が24%、③ジョンソン前外相が22%となっている。
下院は、メイ首相がまとめた離脱案の審議を4日に開始し、当初は11日には採決される予定であった。しかし、離脱の責任者であるラーブ担当大臣自らがメイ案に反対して11月15日に辞任するような状況であり、与党内にも反対派がいるため過半数(下院定数650)には100票程度及ばず、否決される公算が大きかったのである。
そこで、メイ首相は採決延期に踏み切ったのであるが、保守党内の離脱強硬派はこれに猛反発し、党首信任投票という手に出たのである。離脱派の急先鋒はジョンソン前外相であるが、私が都知事のときには下院議員とロンドン市長を兼任しており、東京・ロンドンの友好都市関係の仕事を一緒にした友人である。彼は誇り高いイギリス人で、EU によってイギリスの主権が損なわれているので脱退すべきだという見解であった。