ドルガバが上海でのショー中止 インスタ投稿への差別批判広がる

伊ミラノで行われたファッションショーで拍手を受けるステファノ・ガッバーナ氏(奥、2018年9月23日撮影、資料写真)。(c)Miguel MEDINA / AFP〔AFPBB News

(ジャーナリスト・近藤大介)

 中国人民というのは、恐ろしいのである。ドルチェ&ガッバーナ(以下、D&G)の炎上事件を見ていて、そのことを再認識した。

 話はいきなり大きくなるが、悠久の中国史において、王朝が滅亡するパターンは、概ね3通りしかない。後継者争いを巡る宮中のお家騒動、強力な異民族の侵入、そして人民の蜂起である。

 いまの共産党政権は、「中南海」(最高幹部の職住地)でお家騒動が起こらないよう、10年に一度、慎重にトップを変えている。例外は習近平主席で、今年(2018年)3月に憲法を改正し、国家主席の任期を取っ払ってしまった。それに先立って、昨年7月には、有力後継者だった孫政才・前重慶市党委書記をひっ捕らえ、後顧の憂いを消している。

 また、異民族の侵入に関しては、21世紀の初めに当時の江沢民主席が、「わが国は歴史上初めて、平穏な世を迎えた」と宣言した。どういうことかと言えば、中国は14カ国と陸の国境を接しているが、その14カ国中、ただ1カ国たりとも、中国を侵略する意図を持っていないと確信したということだ。中国人はそんな「幸福感」を、4000年の歴史上、ほとんど味わったことがなかったため、江主席が胸を張ったのだ。その後、胡錦濤時代の2004年には、約4300㎞に及ぶロシアとの国境を完全に確定させ、安心感はますます増した。

中国人民の怒りを噴出させないための4つの掟

 そんな中で、習近平政権が相変わらず恐れているのが、人民の蜂起なのである。「水は舟を進ませもし、転覆させもする」(水能戴舟、亦能覆舟)という故事がある。戦国時代の『荀子・王制篇』が出典で、君子を舟に見立て、人民を水に見立てているのだ。中国においては古代から現在に至るまで、人民は常に執政者を恐れているが、執政者もまた人民を恐れているのである。換言すれば、中国という国は、執政者と人民との不断の緊張関係の上に成り立っている。