1つは、アップルのビジネスモデルにあるという。同社は、さまざまな市場に向けた多様なモデルをつくるのではなく、できるだけ多く消費者が望むような高額な端末を少品種つくり、それを世界で販売するというメーカー。

 これに対し、ライバル企業は、現地の消費者の要望に合わせた多様な製品を、さまざまな価格帯で販売している。

 もう1つは、iPhoneの価格がインドでは高く、多くの人々にとって手が出せる商品ではないということ。

 米国の市場調査会社eマーケターによると、インドで販売されるスマートフォンの95%が500ドル以下。また、約75%が250ドル以下という。

 これに対し、今も同国で販売しているiPhoneの2016年モデル「iPhone 7」「iPhone SE」は、その平均的な価格が、それぞれ550ドルと250ドル。アップルが今年、市場投入した最新モデルの「XS」と「XR」は、最も価格が低い機種であっても富裕層以外は、買うことができないという。

 こうした中、シャオミ(小米科技)、オッポ(広東欧珀移動通信)、ビーボ(維沃移動通信)といった中国メーカーが続々インド市場に参入し、200ドル以下の端末でシェアを伸ばしている。

語らなくなったクックCEO

 アップルは昨年末、社内で高く評価されていたベテラン幹部のミシェル・クーロム氏をインド事業の責任者に任命した。その後、同氏指揮の下、地場小売業者に対する販売支援や、ブランド戦略の刷新、一部小売業者との関係見直しといった施策を講じてきた。

 しかし、アップルは来年1月に、同氏の後任として、フィンランド・ノキアの元幹部、アシシュ・チョウダリ氏を迎える予定だ。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)はかつて、インド市場の可能性について語ることが多かったが、最近は同国に関する言及が、めっきり減った。同氏は今、ほぼ3カ月に一度の頻度で中国を訪れているが、インドへは2016年以来訪れていないという。