しかし、この国では、特に地方の金融機関がこういったリスクマネーの供給者になりえず、当面は官の資金でリードするしかない。しかし、資金以前の問題として、この国がグローバル規模の最先端の成長産業に対する知見、目利き能力、投資ノウハウに劣っていることへの取組みが第一歩と思っておりました。そこで私自身にはこういった能力がないので、JICの社外取締役としてなら何とか貢献できるのではと思い引き受けた次第です。

 JICの第一歩として前述の日本のベンチャー投資に対する能力アップのためにも、米国のベンチャー投資から始めることに私自身も関心を持ち、JIC-USの立ち上げを最優先で取り上げ、短期間で有能な人材を確保し、ベンチャーのスキームの政府認可を得ることができ、いいスタートができたことに喜んでいたところです。

 しかし、今回の混乱の根本原因が日本型の最終決定権者が不明確なボトムアップ意思決定プロセスにあったとすれば、人材確保と意思決定スピードが勝負を決める米国社会で成功を期待することは難しく、私が失望したのは、この点にあります。

 今後、JICが新たな体制でスタートする場合、私の考える上記の課題を何とか解決できる方向に強化して頂くことを切に願うものです。

以上

日産取締役会、ゴーン会長の解任を決定 全会一致で

仏パリでフランスのブリュノ・ルメール経済・財務相(右)と会談した世耕弘成経済産業相(左。2018年11月22日撮影)。(c)ERIC PIERMONT / AFP 〔AFPBB News

「かえすがえす残念です」 冨山和彦氏のコメント

辞意表明について

株式会社 産業革新投資機構
報酬委員会委員長・社外取締役
冨山和彦

 本日、私は以下の理由で(株)産業革新投資機構(以下JIC)の社外取締役の職責について辞意を表明いたします。

 JICは、我が国のリスクキャピタルの機能、取り分け大きなイノベーションを促し経済成長をドライブするための様々な長期的リスク投資機能が、質・量ともに世界に比べて圧倒的な差をつけられている状況を挽回すべく、海外の巨大ファンドに対抗しうるグローバルトップレベルの政府系長期リスクキャピタル投資機関を目指すという政策趣旨に賛同して、社外取締役を引き受けました。