以上、当初、賛同した理念、組織目的の成就が極めて困難になってしまった今、私がこの職にとどまる意味はなく、また自らの能力で貢献できる役割もなくなります。本日、辞意を表明したうえで、辞任時期については、残務処理の完了後、特に米国西海岸のファンドを含め、従来の方針で進めてきたものの、この状況を受けて継続が困難になるかもしれない事項の収拾を、執行部が速やかかつ円滑に行い、訴訟などのトラブルを回避または最小限化して、この騒動による、国際的なリスクキャピタルコミュニティーにおけるJICに対する信頼棄損の拡大を可能な限り回避することを見届け次第、本職を辞任致します。今、何よりも優先すべきは、本日を境に状況を正常化させ、これ以上の信頼棄損を回避することです。
最後に、願わくは、関係当局におかれては、この困難な状況を何とか大挽回し、本来の理念を目指せるような新体制を構築されること、そしてこの騒動を通じて、
①世界クラスの政府系リスクキャピタル投資機関を作るという高い理想を掲げた試みがなぜこうした展開になってしまったのか(同じく「国民感情」にさらされる民主主義国家であるノルウェーやカナダなどでは、なぜそれが可能なのか)
②政策的にリスクキャピタル供給を目的とした官民ファンド一般について、なぜ必ずしもうまく機能しない状況が続いているのか
③さらには民間にも通底する問題として、リスクキャピタル投資機能について、世界有数の資本蓄積国である我が国から、なぜグローバルに一流なプレーヤーが現れず、むしろ世界との差がどんどん広がる一方なのかについて、本質的な問題点に関する真摯なレビューが行われ、後世への教訓とされることを祈るばかりであります。また、私自身も、今回の経験に加え、言わば官民ファンドの原型となっている(株)産業再生機構の中核的な創業かつ執行責任者であった立場からも、そのレビューへの協力を惜しまないつもりです。
以上