(大西康之・ジャーナリスト)
「官民ファンド」産業革新投資機構(JIC)の田中正明社長ら、民間出身の取締役9人全員が10日、辞任を表明した。経産省からの「高額報酬批判」に端を発した経産省とJIC経営陣の喧嘩だが、この日、記者会見した田中氏は「民のベストプラクティスでやれると思ったが、(実態は)国の意思を反映する官ファンドだった」と語り、争点は「報酬ではなく方針」と主張した。安倍内閣による長期政権が続く中、「官と政の奢り」が民のプライドをないがしろにした結果である。
日経電子版が辞任の第一報
12月9日、午後11時過ぎ、日経電子版が「JIC経営陣 辞任へ」と第一報を流した。すぐさま情報筋にアクセスすると「明日の午後、記者会見する予定だ」と返事があった。
10日朝、JICの広報に電話して「午後記者会見があると聞いている。フリーのジャーナリストは会場に入れるか」と尋ねると「担当者が席を外しており、わかりかねます」と素気無い返事。
「会見があるかないかが分からないのか、フリーが入れるかどうかが分からないのか」と聞いても「担当者が席を外しており」とおうむ返し。「それだけ言っとけ」と命じられている広報さんをいじめても仕方ないので電話を切る。
その後、情報筋から「記者会見は午後1時から丸の内永楽ビルのJIC本社で」と知らされる。確認のため正午にJICに電話すると「まだ何も分かりません。分かり次第、こちらからご連絡します」とさっきよりはまともな対応。それにしても予定の時間まですでに1時間を切っている。
電話がないので永楽ビルに押しかけると、すでに受付が始まっており、会場は満員で後ろにはテレビカメラの三脚が林立している。大手メディアには何時間も前から知らせていたようだ。