中国専門家として中国の軍部や諜報機関に誰よりも通じていたと自負する著者が、朝鮮戦争、中ソ関係、ニクソン訪中、天安門事件などに関わる中国の考えを米国は少しも理解していなかった、というから驚きである。

 ピルズベリー氏と同じように、ジョージ・ワシントン大学のロバート・サタ―教授なども中国の攻撃的行動を過小評価していたことを告白している。

 中国が依然として「孫子」の国であったことを如実に示したというべきであろう。

 そこに習近平氏が登場し、鄧小平の遺訓ともいうべき「韜光養晦」の終焉を告げたのである。

 「中華民族の偉大なる復興」を掲げて権力を集中し、「中国製造2025」で世界一の軍隊を作り上げ、太平洋の二分を目指すと公言したのだ。

 そのベースになる研究や技術は米国や日本など先進国の知財窃盗によるものである。

 中国が米国に対峙する、あるいは凌駕する覇権国家を目指すと闡明するに至っては、好意的にサポートしてきた米国も黙っているわけにはいかないと立ち上がったのだ。

中国の条約破りに加担した米国

 日本で参事官として1919年まで2年間勤務したジョン・マクマリーは、帰国後は国務省で極東部長や国務次官補を務め、1925年から4年間、公使として中国で勤務する。

 1921~22年のワシントン条約会議にも参加し、中国の主権や領土をいかに保全するか真剣に議論されたことを知り尽くした人物である。

 また、米国が英国に代わって世界のリーダーに躍り出る仕組みを仕かけ、日英同盟もこの時に破棄されたのだ。