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伊藤達哉に告げた「もう話さない」の真意

 実際、今シーズン僕はキャプテンを務めていない。監督だけでなく、チームメイトも僕の気持ちを理解してくれた。キャプテンという役職を離れ、重荷を下ろせたような気持ちもあるが、「キャプテンじゃない」という理由で、自分の行動が変わることはなく、気がつけば、チームメイトに進言することもあるし、トレーニングで手を抜くことは一切ない。もちろん、現キャプテンを邪魔するようなことはしないが、今までどおり、僕は僕のやるべきことに日々注力している。

 自分が全部正しいとは思わないけど、立ち位置を見極めることや周囲との距離を測ることは、知らない土地で戦う上で重要だと思う。

 今、ハンブルガーSVには伊藤達哉という21歳の日本人選手が在籍している。日本代表にも選ばれた有望な選手だ。達哉は2015年、18歳のときに柏レイソルから移籍してきた。当時は2軍に当たるハンブルガーSV Ⅱに所属していて、スケジュールが合えば、食事へ行ったりと共に過ごす時間も長かった。岡崎さんに助けられた自分のことを考えれば、達哉をサポートするのは自然なことだ。

「もう、達哉とはいっしょに行動しないから」

 昨年、トップチームに昇格した達哉に僕はそう告げた。

 これは僕と達哉との関係がこじれたとかそういうことではなく、監督やチームメイトへの印象の問題だった。僕といっしょにいたほうが達哉のストレスは軽減されるだろう。けれど、周囲から、僕に頼ってばかりいると見えれば、達哉の評価はきっと下がってしまう。

 ドイツ語を話そうとしないと、ドイツ語が話せないやつだとなり、実際には悪影響を及ぼしていないのに「コミュニケーションに問題あり」という烙印を押されかねない。

 簡単に言えば、信頼や信用を得るためには、単身でその環境に飛び込まなければならない。これは僕自身がドイツへ来て痛感していることのひとつだ。

 これは日本人に限らない。

 ドイツ語を話そうとせず、同郷の仲間ばかりと、母国語で会話し続けている海外から来たチームメイトをたくさん見てきた。そうした姿を見て、助けてやろうとか、好感を抱きづらく感じるのは事実なのだ。

 だからこそ、達哉にはそう告げた。

 もちろん達哉はトップチームに来るまでの間、下のチームでは単身戦ってきたので、僕の助けなんて必要ないかもしれないけれど・・・。

※ ※

 さて、初めての2部リーグで、ハンブルガーSVは開幕から5勝3分2敗と苦戦し、10月下旬監督交代があった。新監督は37歳ながら、年間最優秀監督賞を受賞したこともある注目の指揮官。

 ドイツでは今、30代の監督が台頭している。

 現役選手としてのキャリアはわずかでも、テクノロジーを駆使し、自身の理論や戦術をチームに落とし込む彼らは「ラップトップ・トレーナー」と呼ばれる。新監督就任後チームは4連勝し、5位だった順位も首位に立った。今シーズンは、これまでのどんなシーズンより優勝をしたい、その思いが強い。(2018.11.29)