西川社長の話で印象的だったのは次のくだりである。

「長年にわたるゴーン統治の負の部分が出てしまった。極端に特定の個人に依存した経営から抜け出さなくてはならない」

 日産自動車を再建するためルノーから颯爽と乗り込んできたのが19年前。古株の役員連中を一掃し、「系列」を解体し、工場も閉鎖した。大ナタを振るう姿はある種、爽快でもあり、一連のリストラは「ゴーン改革」と呼ばれた。

 人件費を含む固定費を大幅に引き下げたことで日産の業績は V字回復。ゴーンはアンタッチャブルな「カリスマ」となり、ルノーのCEO、三菱自動車の会長まで兼ねるようになった。まさにオールマイティーである。

両トップに対する訴訟も視野に

 当然のように質疑応答での質問は、ゴーンの暴走ぶりに集中した。

Q ゴーンはカリスマだったのか、暴君だったのか?

西川社長 特に(日産にやってきた)初期に他の人間にはできなかったこと、大きな改革を実施したのは事実。その後は功罪両方がある。ゴーンが言い出したことであっても、それを実行したのは社員や取引先であり、19年間に積み上げた財産をすべて否定したくはない。

Q 功罪の罪とは?

西川社長 最近は現場、実務からだんだん離れ、レポートする人間の数も少なくなっていた。少ないインプットで決めてしまう場面があり、業務に弊害が出ていた。(日産から見るとルノーを代表するゴーンは)43%の株主であり、執行権も握っている。ガバナンスの構造上、かなり注意しなくてはならないポジションになっていた。

90分間、200名以上の報道陣を一人で相手にしてみせた西川社長

Q 株主や会社の利益を毀損している。会社としてゴーン、ケリーを訴えるつもりはないか。

西川社長 質問の趣旨はわかります。今はお答えできないが、それくらい重大なことだという認識はある。

 記者会見は延々と続き、終了したのは23時30分。私はそのままGHQで、この原稿を書いている。日付はすでに20日に変わっている。原稿を書く記者にも、質問に答える広報部員にも疲労の色が見えるが、戦いは始まったばかりである。