固定給ベースの役員報酬は経営者のやる気をそいでいるのか?(写真はイメージ)

固定給ベースの役員報酬は非効率の温床か?

 コーポレートガバナンス改革の一環として役員報酬を見直す上場企業が増えている。

 中心テーマは、経営者に「攻めの経営」を促すため、どうインセンティブ(動機)付けするかである。日本企業の役員報酬は海外企業と比較して業績連動報酬のウェイトが低いことが知られている。これがやる気をそぐ非効率の温床と疑われているのである。

 三菱自動車のカルロス・ゴーン会長は、同社の役員報酬が固定給にかなり依存している状態を「マネジメントの原則に反する」と言及している(「日本経済新聞」2016年12月15日)。このような意向を反映して、同社の臨時株主総会では、取締役報酬総額の上限が年30億円と約3倍に引き上げられた。

 しかし、固定給ベースの役員報酬は論難されるべき事柄なのであろうか。

 経済協力開発機構(OECD)が策定した『OECDコーポレート・ガバナンス原則』では、取締役会が従業員、顧客などステークホルダーの利益も十分に配慮し、公平に取り扱うことを期待している。

 ここで期待されている役割は、「全体の奉仕者」として行動することを求められている公務員と酷似している。両者に共通しているのは、託された財産や権限の濫用にブレーキをかけ、専門的なサービスを真摯に実行する(信認義務を果たす)ことである。役員報酬を巡る議論は活発であるが、「公務員のやる気を引き出すためインセンティブ報酬を導入しよう」という意見や「東大法学部卒を安定的に獲得するため中央省庁の給与水準を上げよう」という意見は寡聞にして知らない。