これまで完璧な垂直統合モデルを構築し、あらゆる面で盤石だった自動車業界に、とうとう地殻変動の兆しが見え始めた。キーワードは「EV(電気自動車)」と「自動運転」、そして「北米市場」である。2017年は自動車産業における歴史的な転換点となるかもしれない。
トヨタはエコカー戦略を転換、日産は虎の子部品メーカーを売却
トヨタ自動車はこれまでの方針を大きく転換し、EVの量産化に踏み切るという決断を行った。11月17日にEVの開発を担う社内ベンチャーを発足すると発表し、EVの開発を本格化させる方針を内外に示した。これは見方によっては、従来のトヨタの戦略を根本から変えてしまうほどのインパクトを持つ。
同社は次世代のエコカー戦略について、一貫して、燃料電池車(FCV)とハイブリッド車(HV)を中核として位置付けてきた。特にFCVについては、日本の国策にもなっており、全国に水素ステーションを建設する計画まで浮上している。だが、こうしたトヨタの思惑とは逆に、世界ではEVがエコカーの主役となりつつあり、FCVは劣勢に立たされている。
トヨタは世界最大の自動車メーカーなので、あらゆる製品ラインナップを揃えておく必要がある。EVが相対的に有利になってくるのであれば、それに対応した製品を開発するのはトップメーカーとしてはごく当たり前の行為であり、声高に叫ぶような話ではないとの見方もあるだろう。だが自動車業界のEVシフトはかなり本格的なものであり、今回のトヨタの決断は、単にラインナップの中にEVが加わったということ以上の意味がある。