田原 それも狙いが当たった証拠でしょう。でも、女性が1人で見る色っぽい番組って、具体的にどういう番組を狙ったわけ?
大川 番組が変わっても、相変わらずお金はないので、自分たちで取材する余裕もないわけです。だから完全に「他人のフンドシ」で、『東京スポーツ』さんとか『日刊ゲンダイ』さん、『夕刊フジ』さんっていう、男性しか読まないであろうっていう夕刊紙を紹介することを始めました。その中でちょっとエッチな記事を、「あなたの旦那さんはいつも駅でこういうのを買って読んでるんですよ」みたいな体裁で紹介して。そこからスタジオで出演者が「ああだ、こうだ」とトークを始める、というスタイルです。
ようやく出演者にギャラを払える態勢に
田原 どういう人が出ていたんですか。
大川 最初は主婦向けということで、30代くらいの女性が若いころに大人気だった元ジャニーズのタレントさん、それから夫婦のトラブルにも詳しい女探偵のナオミさんなど。それから僕が、そのキャラクターに惚れて出演を依頼したのが作家の岩井志麻子さんです。
田原 岩井さんは下ネタもバンバン言うし、最近はすごい奇抜なメイクでテレビに出てますね。
大川 当時はまだヒョウ柄の服は着ていても、豹のコスプレまではしていませんでしたが・・・。いずれにしても、出てもらう人は、テレビの仕事で飯を食ってない人を中心にお願いしました。
田原 それは、高いギャラをもらわなくても出てくれるから?
大川 そうです。ギャラの額も「文化人」の扱いで了解してくれて、なおかつ本業がちゃんとある人ならば、余計なことを考えずにテレビで好き勝手言ってもらえそうで、面白くなるかなという狙いです。
田原 じゃあ、やっぱりギャラは安かったわけ?
大川 そうですね。具体的に言えば、3万円ぐらいでした。でもMXって、それまで出演者にほとんどギャラを出したことがなかったんですよ。
田原 それまでは逆にもらっていたんだものね。ここで、もらう側から出す側になった。
大川 ええ。そこで感じたんですけど、例え5000円でもいいからギャラは出さないと仕事って成立しないなと。
田原 少しでもギャラを出していれば、一応出演者に注文を付けることが出来るものね。
大川 そう。そうなんですよ。だから、本当に1000円でも2000円でもいいから出すようにしようってなったんです。MXでは、『5時に夢中!』が初めてノーギャラとか、逆にお金もらって出てもらうっていうことがなくなった番組だったはずです。
田原 ただ夕刊紙の記事を紹介するだけだったら、色っぽい番組にならないでしょう? どうしたんですか。
大川 VTRを作る金もないので、後は出演者の方にしゃべってもらうしかない。もう本当に深夜ラジオに近い感覚です。
トークのきっかけは正直、なんでも良かったんですよ。視聴者からのハガキでも良かったんですけど、その頃のMXって見ている人がほとんどいないからハガキもこない。だから毎日変わる新聞のニュース記事を話すためのネタとして使わせてもらいました。
だからトークの内容はその記事のことだけじゃなくていい、脱線もどんどんしてもらって構いませんっていう感じでした。そうなってくると、女性が好む下ネタがやっぱり盛り上がるんですよね。