田原 新聞記事をきっかけにして、出演者にちょっとエロチックな話をしてもらうわけですね。ただ下ネタっていっても、『5時に夢中!』ではどこまでできるんですか。

大川 どこまで、と言いますか・・・。一つ気にしてるのが、やっぱり夕刊紙に書いてある下ネタって、男性目線の直接的なものが多いので、できるだけ女性が好む、ちょっとオブラートでくるんだような扱い方を心掛けています。

田原 つまり男性が求めるセックス的なものと、女性が求めるものは違うわけね。

大川 はい。そこは学びましたね。同じAVでも、男性の監督が撮ったAVと、女性の監督が撮ったAVが違うみたいな感じです。

田原 監督が男性か女性かでやっぱり違うのかな。

大川 女性の監督がとると、事に及ぶまでのプロセスがすごく長いというか・・・。例えば、まず最初は手つないで、それからゆっくりシャツを脱がせて、という具合ですかね。

田原 実は僕はいま婚活パーティーの取材をしているんですけど、そこでも男性が求めてるものと、女性が求めてるものは全く違うんです。

大川 やっぱりそうですか。

田原 男性は手軽なセックスを求める。

大川 ですよね。

田原 そして、手軽なセックスを求める男性は、絶対にモテない。

大川 ははは。

 夕刊紙の記事に女性目線のものって実はあまりないんですけど、できるだけそちら側に近い記事を見つけて、出演者の方にもその路線で話してもらうことにしたわけです。

田原 それで、結構視聴率が取れた?

大川 正直、視聴率はそれほどありませんでしたが、視聴者の一部からの反響があったんですね。当時はまだメールも今ほど一般的じゃなかったんですが、ハガキがくるようになったんです。さっきも言いましたが、MXってほとんど誰も見ていなかったので、それ自体が異例のことでした。

 しかもそのハガキの主が、だいたい夜の仕事のお姉さんだったんです。夜、お酒を出すようなお仕事の方とか、風俗のお姉さん、2丁目の方とか。

田原 水商売とか風俗の人に刺さったわけだ。

大川 ええ。それで方向性が見えてきたというか。結局、全方位に向けて戦う体力はないわけですから、もうピンポイントでその客層に向けた番組にしようと。

田原 特定の客層を狙うと。

大川 はい。それで、昼間は寝ていて夕方に起きるような人たちに向けた内容にしていったんですね。あの時間帯って他の局はほとんどニュース番組じゃないですか。そこで僕らは、ニュース番組みたいな体裁で、夕刊紙のネタを拾って、あれこれトークする。そういうくだらないことを面白がって見てくれる人もいるだろうと。

警察に逮捕されるような番組を狙った

田原 僕がいた東京12チャンネルは、当時「テレビ番外地」って呼ばれていた。つまり、誰もいないところに向けて放送していると。大川さんが感じていたように、やっぱり誰にも相手にもされていなかった。しかも制作費が、日本テレビやTBSより、4分の1とか5分の1くらいしかない。

 そういう中で、日本テレビやTBSと勝負していくにはどうしたらいいかと常に考えていた。大川さんの姿勢はその点でものすごく共感できる。

大川 でも田原さんは予算がない中で、ドキュメンタリーをものすごく撮られてるじゃないですか。どうやって成し遂げたんですか。

田原 当時の僕が考えたのは、日本テレビやTBSやNHKができないものは何だ、ということ。頭を使うっていっても企画力は向こうの方が高い。だって彼らの方が知能指数も高いんだから。それでも彼らができないものは何だ、といったら危ない番組しかなかった。つまり、警察にパクられるような番組ですよ。僕はこればっかり撮ってた。実際、2度パクられましたからね。

大川 その発想と実行力は本当にすごい。

田原 12チャンネルが良かったのは、幹部も「普通にやっていたら誰からも相手にされないから」というのを理解していてくれたこと。だから、僕が危ない番組やって警察にパクられても、その番組をオンエアしましたから。そういうところが、僕にとってもやりやすかった。

大川 一部の方だけかもしれないけれど、局のお偉方に理解があったってことですか?

田原 理解があったっていうか、それ以外に戦う術はないと思ったんだね。

大川 そうでもしないと勝ち目がないと。

田原 そう。大川さんの発想と一緒ですよ。

次回(「マツコ・デラックスはなぜ本質を突けるのか」 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54511)に続く