この本に専門家の解説は必要なくて、人の痛みを自分のことのように捉えることができる人、そして「NO」と言える強さがあって、「NO」と言っていいんだよと説得力をもって人に伝えることができる人。そう考えると、小島さんはこの本の解説者として必然で、他に代わる人はいませんでした。(中略)

 どうしようもない理不尽なことが起きた時に、声をあげていいんだよというメッセージを、小島さんが発してくださったら、それはきっと多くの人に響くだろう。そう思いました。(中略)

 今やアメリカでは差別主義者が大統領になってしまってますが、そんななかでも人は生きていかないといけないし、かけがえのない者を守っていかないといけない。理不尽な社会で生き延びる、小島さんなりの方法を書いていただけないかと勝手に願っております。

 解説を書いていただくのはあきらめていたのだが、同じ日に小島さんから原稿が届いた。次のように書き添えられていた。

「どのようなお考えで、この作品の解説を私に依頼して下さったのがわかりました。それでもお断りするつもりでおりましたが、先ほど寝る前にふと書けるのではないかと思い、試しに出だしを書いてみたら、そのまま最後まで書けました。おそらく個人的なトラウマがあるので通常のものを描くときとは違って非常に頭が混乱するのだと思います。いっそその体験を書いて整理しながら考えようと思ったのがよかったようです」

 今回小島さんの解説を読み返し、よくここまで自分の経験を明かしてくださったと改めて感謝の念を覚えた。池谷さんが声なき人に寄り添い、積み重ねて来た取材と作品の力が、小島さんのこの唯一無二の解説につながったのだと思う。

 そう、本書は、ひどく、人に薦めにくい。それでも、この本が、多くの人の手にわたればよいと願う。