2009(平成21)年4月に始まったこのコラムも、今回を含めて残すところあと3回になった。別れの挨拶をするには少々早いけれど、最終回に向けて気持ちを盛り上げていくためにも、ここで読者の皆様にお礼を申し上げておきたい。
JBpressと縁ができたのは、私の小説『金色のゆりかご』(光文社)がきっかけだった。「望まない妊娠」と「海外養子斡旋の闇」に焦点を当てた小説にJBpress編集部が注目して、インタビュー記事「日本は本当に先進国なのか?」を掲載してくださったのである。その後にコラムのお話をいただき、「結婚のかたち」の連載が始まった。
私は文筆を生業にしているが、家庭においては「主夫」であり、家事全般を引き受けながら、小学校教員の妻と2人の息子と暮らしている。そこで、「結婚のかたち」というタイトルで、主夫として、夫婦や家族について日頃から考えていることを気楽に書いていくつもりでいた。しかし、これだけ人目に触れる場所にコラムを書かせてもらっているのだからと、身の程をわきまえずに時事問題に首を突っ込んだりもした。
ご存じの通り、JBpressでは読者数がランキングとなって表示される。また、読者の意見もそのまま掲載される。作家として、編集者から小説の書き直しを命じられたり、批評家に作品を酷評されるのには慣れているつもりだったが、読者から生の反応を受けるのは初めての経験で、当初はかなり戸惑った。実は今でも戸惑いはあるものの、様々なご意見を刺激として受けとめて、次に生かすくらいの精神力はついてきた。
私はずっとインターネットを利用してこなかった。家には以前からデスクトップ式のパソコンがあり、妻が学校関係の書類や文書の作成に使っていた。長男も、小学校の授業でパソコンの基礎知識を習ったとのことで、妻に罫線の引き方や写真の張り付け方を教えていたが、私がパソコンに触るのはワープロからフロッピーディスクに取り込んだ原稿のデータをメールに添付して編集者に送信する時だけだった。
「結婚のかたち」をJBpressで連載してみて、私はインターネットの持つ威力をまざまざと知った。それまでも雑誌や新聞にエッセイを書いてきたが、それらは基本的に読み捨てにされてしまう。ところがインターネットならば、誰でも簡単に過去の記事まで読むことができるのだ。キーワードによる検索でもヒットするために、面識がなかった新聞記者や雑誌編集者から、「JBpressのコラムを読んだのですが」と前置きされて、その話題についての意見を求められたことが何度もあった。