教師が絶対的な権力を持つ学校で起きる性犯罪「スクールセクハラ」の実態を浮き彫りにした執念のドキュメント『スクールセクハラ』。この本を著者がなぜ書こうとし、編集者がなぜ作ろうとし、書店員がなぜ売ろうとしたのか。その三者の思いをお伝えする。「書かないわけにはいかなかった」と語る著者のやむにやまれぬ動機とは・・・。(JBpress)
女性からよく聞かれる。「どうして『スクールセクハラ』を書いたんですか」と。
副題は「なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか」。その理由を探り、防止する手段を考える本だ。加害者は圧倒的に男が多く、被害者の多くは女性。質問されるたびに「男なのに、本当に被害者の気持ちが分かるんですか」という真意が隠れていそうで、怖い。
本当のことを言うと、被害者の女性に「大変でしたね・・・」と言いながら、僕がそのつらさをどこまで理解できているのかは、分からない。「あなたには分からないでしょう」と言われたら、「そうかもしれませんね」と答えるしかない。
ただ、話を聞くうちに、相手の気持ちが少しほぐれてくるのが分かるから、黙って聞く。中には何十年も前の話を「初めて話せた」と言う年配の女性もいて、聞くこと自体が被害者の癒やしになるのかもしれない、と思う。
書かないわけにはいかなかった。事実を知った者の責任として。その理由を一言で言うと、教え子にわいせつ行為を繰り返している教師たちが、何事もなかったかのように、今日も平然と教室にいることが許せなかったからだ。そして、次の事件を防ぐには、書く必要があると強く思った。