2 陸海空が領域を跨ぎ、いかに統合して戦うかが本質

 筆者は陸自だけに肩入れするつもりはない。しかし、海空自は「動的戦力」であり、陸自は「静的、基盤的戦力」である特質は不変だ。

 空自は、強烈な瞬発力・破壊力を持ち、海自は粘り強い作戦に適している。

 一方、空自は滑走路が多数なければ戦う前に壊滅する危険がある。ミサイルが有効射程を伸ばし精密度を上げ、センサー類の感度が向上した海はもはや広い舞台ではない。

 また、海原には艦船の隠れる場所がなく、海自艦艇は洋上では常に攻撃の的になると同時に、搭載した弾薬がなくなれば、敵のミサイルの射程圏下の港に帰り補給しなければ戦い続けることができない。

 陸自は、いったん展開してしまえば機動力と地形地物を生かして生存し戦い続けることができるが、島嶼への展開能力が劣ると同時に、弾薬補給に問題がある。

 従って、それぞれの特色を生かしつつ、また、欠点を補いつつクロスドメイン(領域横断)で力を合わせなければならない。

 これを前提として米国が同盟国・友好国に期待する軍事的役割を理解していただきたい。

 CSBAの構想によれば、同盟国・友好国には

(1)「潜り込む不正規軍による攻撃の破砕」
(2)「同盟国によるA2/ADネットワークの構築」を期待し、

 米国は

(3)「遠距離作戦」
(4)「封鎖作戦」を実施し長期戦で勝利を追求するとしている。

(1)は、クリミアにおいてロシアが階級章をつけていない「軍人」や民兵(Little Green Men)によるハイブリッドな戦いを指しており、NATOはこれを新たな脅威として認識している。

 中国に当てはめれば、海上民兵(Little Blue Men)や快速反応部隊の特殊作戦としてとらえることができる。これへの対処は陸自の役割として後述する。

 (2)は地上発射型のSSMやSAMを中核とし、海空の対艦ミサイルを統合して対空、対艦の「阻止の壁」を作り、太平洋に中国艦隊や爆撃機などを進出させないことを同盟国に期待している。