ここで大切なのは、平時と有事では米軍の態勢、動きは全く異なるということを理解することだ。

 政治的配慮もあり、米軍も日本有事にはすぐに駆けつけて自衛隊と一緒に戦うと言うだろうが、実態は中国の巨大な軍事力の行使の前に、生き残り勝つための戦略を冷徹に追求するのである。

 米側は、現実的な議論を望んでいるが、日本の官僚は不都合な事実を知らされておきながら、日本に与える衝撃が大きいとして言及しないように米側に頼んだと聞いている。

 その中でも、CSBAは一様に有事の陸自による南西諸島防衛の考え方を絶賛し、米陸軍も陸自に学ぶべきだが、米陸軍は拒否していると言っていた。それが、ハリス元司令官の号令で実現したのである。

 陸自が米海軍のリムパックに参加して、55海里(約100キロ)沖合のLST Racineに対しSSMを命中させた。

 Foreign Affairs誌が「第1列島線に陸上部隊を配置すれば中国は作戦を変えなければならなくなる」とする記事を掲載したように、南西諸島に陸上部隊を配置すれば中国の自由な動きを阻止することができるのである。

 米陸軍も陸自に追随していることは、米国の有事の基本戦略は脈々として生き、現実化している証拠だと考えている。そして、陸自は世界に先駆けて新しい「陸軍」へと脱皮し続けているのである。

 また、詳しくはここで述べないが、米軍の各種対艦ミサイルは、陸自のSSMとSAMを中心に構築される南西諸島の「阻止の壁」に守られて飽和攻撃を繰り返すことになる。

 すなわち、南西諸島の作戦の成否と持久力に米国の対中国軍事戦略・作戦の成功のカギがあるということだ。これはCSBAも認めたことでもある。