いかにして集中するか

 その弁護士によると、机の前に6時間座っても、10分も集中できない日があるという。もし集中できた時間が10分しかなかったなら、学習時間としてカウントできるのは10分。逆にもし、1時間しか机の前に座らなくても、しっかり集中して学習できたなら、1時間カウント。このように、「何時間、勉強机の前に座ったか」ではなく、「10分でもいいから集中して学習できたかどうか」が大事なのだという。

 いかに学習に対して集中力を高めるかは、実は、勉強以外のことをしっかりやるのが大事になってくる、と、その弁護士は話した。たとえば、友達が「遊びに行こう」と誘ったとして、それを「勉強があるから」全部断っていたとしたら、集中できなくなるという。

「あいつら、今頃楽しんでいるんだろうなあ。そもそも弁護士になれるかどうかも分からないのに、なんでこんなに自分を犠牲にして勉強しなきゃいけないんだろ?」なんていう思いが頭の中に駆け巡ると、集中できなくなる。それくらいなら思い切って、友達と時間を決めて、遊びに行ったほうがよい、というのだ。

 また、体を動かすことも大切だという。体を動かさずに部屋の中にこもりっきりになっていると、心も部屋の空間の中に狭く閉じ込められて、動きが悪くなってくる。そうすると、勉強にも身が入らなくなる。だから週に3回くらいはジョギングをして体を動かし、血流を促すと同時に、気持ちもリフレッシュしたほうがよいのだという。

 家事も大切だ、とその弁護士は語った。「弁護士になるために、すべての時間を勉強に注ぎたいから、家事は一切やらない」なんて自分を追い込むと、かえって集中できない原因になるという。

 司法試験は何年も落ち続けて、それでも合格できない人がいくらでもいる超難関。「合格できなかったらどうしよう? 家族に働かせて勉強だけしていた、ただのゴクツブシになってしまうじゃないか」と不安な気持ちが湧いてくる。そうなると、焦りの気持ちとない交ぜになって、集中力が失われやすくなってしまう。

 だから、家族としてきちんと家事を分担し、家族の中での「居場所」を確保し、安心して学習に集中できるように自分の心を整えることが大事なのだという。