「驚かせよう」というモチベーションを大事に。

 部下も子どもも「褒めて育てる」ことがよく推奨されている。しかし、それを実践してみてうまくいかなかった経験をお持ちの方は多いのではないか。褒めて伸ばそうとしたら、むしろ褒めた瞬間から努力しなくなった経験はないだろうか。

 私はある。褒めた途端、その分野に興味を失い、以後、別の方に興味を移してしまった。「あれ、すごかったじゃん。もう一度やってみたら?」と勧めるのだが、もう手を出そうとさえしない。言えば言うほどうるさがり、むしろ嫌いになってしまうことも。

 そういう経験をお持ちの人も多いためだろう。「褒めて育てろっていうけど、うまくいかないなあ」と、ため息をつく人も多い。

期待しない方がうまくいく?

 では、なぜ褒めるとうまくいかないことがあるのだろう? どうも「魂胆」が見えてしまうためのようだ。「こちらの方向を伸ばしたい。褒めて誘導しよう。せめてこの水準くらいは達成してほしい」という期待、願望を持っていることが見えてしまい、それで一気に醒めてしまうようだ。

 では、なぜ期待が見えてしまうと醒めてしまうのだろうか? どうやら、褒める側が「それはできて当たり前。せめてこのくらいは達成してもらわないと」と、高い水準で期待していることが伝わってしまい、褒めている割には、自分の達成しているレベルが大したことないんだ、ということが分かってしまうからだろう。まるで、手のひらの中で踊らされる孫悟空なのではないかと感じて、「意のままに踊るもんか」と、アマノジャクな心が動くからなのかもしれない。

 私は過去、さんざん褒めて動かそうとして逆の結果になることにガックリとし、期待すること自体をすっかり諦めてみた。どうせ期待通りには動いてくれないよ、と、むしろ悲観的なくらいに。