「東芝のPC事業は、去年の実績で1600億円強の売上があるので、買収すると経済的な効果がある。

 補完関係に関しては、鴻海は、ノートPCも製造していたし、インフラも持っている。今後、コストダウンや物流、サービス等を含めた、色々な効果が出てくることを期待している。

 ただ現状東芝PCは生産工場も持っているし、特にB2Bのアフターサービスは収益源になっているので継続していきたい」

 PC事業における鴻海との提携効果について、期待の表明はあったが、明確な方針は示されなかった。

シャープ・鴻海連合の「光と影」

 鴻海による買収後、経営の立て直しに成功したかに見えるシャープだが、懸念材料がないわけではない。

 私が考える最大の懸念材料は、他でもない鴻海との関係だ。

 業績回復に大きな役割を果たしたのが、液晶テレビ事業の好業績だった。

 2016年9月にシャープは極めて挑戦的な計画を打ち立てた。2018年度の世界販売を、16年度見込み比で2倍の1000万台に増やすとしたのだ。

 その結果はどうだったかと言えば、中国市場での販売台数を約400万台と倍増させ、見事に1000万台の目標を達成したのだった。

 中国市場でシャープ製品の販売を担うのが「鄭州市富連網電子科技」という鴻海傘下の販売会社だ。同社とシャープの取引額は、テレビの販売増に比例するように、2018年3月期に前の期比3.3倍の1909億円に拡大した。

 しかし、中国のテレビ市場は縮小しており、競合他社との価格競争も激しく、収益面では苦戦が続く。鴻海は2017年12月期に9期ぶりの減益となった。その一因として、「シャープのマーケティング費用がかさんだ」との指摘もある。

 シャープの液晶テレビ1000万台の販売を達成するために、多額の販促費等を投入して、安値攻勢をかけていた可能性があるのだ。

 シャープと鴻海の関係は、両社で価値を生み出す「光の部分」と、シャープの業績を下支えするコストを鴻海に付け回す「影の部分」があると考えられる。

鴻海で燻る労働問題

 鴻海の株主総会が、シャープより2日遅れの6月22日に、台湾北部の鴻海本社で行われた。