男女の役割分業意識の軽減に努める研修も

「男性の育児参加は不可欠」という風土が醸成されつつあるものの、「女性が育児をするのが当り前」という男女の役割分業意識が培われているケースは多い。ソニーではこういった自分の中のジェンダーバイアスへの気づきを促す「無意識のバイアス」に関する研修を導入している。6人くらいのグループワークで普段の行動について話し合うことで、自身の無意識のバイアス軽減に努め、日々のマネジメントに活かすことを目的にしているという。

 育休中の男性の従業員を対象にした「Working Father’s Meeting」といった当事者向けのプログラムでは、必ず上司も一緒に参加し、両者が感じたことを共有しているという。こういった育児に関する男性対象のプログラムを実施する企業は珍しいのではないだろうか。

 さらには、部署単位でソニーらしい働き方を実現することを目的とした「じかんプロジェクト」という労働時間改善プログラムも実施する。

 時間効率を高めるため、テレワーク制度、ノー残業デーの徹底、フレックスホリデー(年休10日分の計画取得)といったことを行っているが、それも全社一律にではなく、各職業が主体的に考え、最適なやり方を再構築し、効率的で効果的な方法に取り組んでいる。定例会議が半減したことでコア業務にかけられる時間が大幅に増える効果が出たという。

男性の当事者意識が働き方改革のきっかけに

 紹介した2社に共通しているのは、男性社員の育児に対する当事者意識が生まれ、育児にまつわる休暇が取りやすい風土が生まれたことだ。社員の育児休業取得は「その人しか分からない」という業務を棚卸しするきっかけとなり、チームや社内での情報共有化を進める業務改善が進む機会となる。その結果、残業が減り大幅なコスト削減につながる企業もある。

 ヒューリックでは男性の育児休業取得率の向上により、新卒入社の3年間定着率100%、育児休業復職率100%と、人材確保に効果が生まれている。またソニーでは男性も育児とキャリアの両立ができると社内意識の変化が起きているという。

 育児休業を取得したソニーの男性社員からは「子どもの誕生と成長は、働き方を見直す有意義な機会となった。内発的動機から生まれる新たな仕事への取り組み、本質的なダイバーシティ理解につながっている」との声が挙がっている。

 仕事と育児の両立支援に男性が当事者意識を持つことが、企業の働き方改革の一助になるのは間違いない。まずは対象となる男性従業員に短期間でも取得を促すことで、職場のモチベーションが上がり、生産性も向上するきっかけになるだろう。